過去の株主総会で議案への賛成が少なかった企業の株価が強い。米国の関税政策でマクロ環境の不透明感が高まる中、コーポレートガバナンス(企業統治)の改善に注目して投資する動きが出ている。

議案賛成率が低い銘柄で構成される株価指数は、トランプ氏が米大統領選で勝利した昨年11月からの上昇率が15%と、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)を上回る。ゴールドマン・サックス証券が算出するこの指数は、1日当たりの売買代金が1000万ドル(約15億円)以上の銘柄のうち、直近の年次株主総会での賛成率下位10%を組み入れている。

MCPアセット・マネジメントの大塚理恵子ストラテジストは、議案への賛成が少ないのは「マネジメントに不満がたまっている」ことの表れで、アクティビスト(物言う株主)などが株式を買い増すとの思惑が高まりやすいと語る。アクティビストの保有は、株価上昇につながり得るガバナンスの改善期待を生む。

アクティビストのストラテジックキャピタルが株式を保有していたダイドーリミテッドは2024年の株主総会で、ストラテジックCが提案した取締役を選任。同日の株価は約8%上昇した。ストラテジックCはその後持ち株を全て売却した。

輸出企業の寄与度が高い日経平均にとって、1-3月期は20年以来で最悪の四半期になる見通しだ。27日時点の年初来下落率は5.3%。投資家が慎重になりがちな現在、株主が要求するガバナンス改善はマクロ環境に左右されない個別要因として相場を支える可能性があり、資金の逃避先を探す際のキーワードになる。米政権は4月2日に相互関税を発表する予定で、関税の影響に注目が集まる。

ただ、賛成率の低さがガバナンスの向上に直結するとは限らないと、UBPインベストメンツのファンドマネジャー、ズヘール・カーン氏は話す。同氏はフジ・メディア・ホールディングスを例に挙げ、取締役の支持率は平均以下だったにもかかわらず、改善に着手したのは今年に不祥事が発覚してからだったと指摘した。

ガバナンス改善に焦点を当てたファンドを運用するカーン氏は、株式の持ち合いで株主に守られていない企業の方がより改善に期待ができるとの見方を示す。

三井住友DSアセットマネジメントの武内荘平シニアファンドマネジャーは、「日本のガバナンスは米国に比べて不十分」と述べ、改善が進んでいない企業への注目度は6月の株式総会に向けて高まる可能性があるとみている。

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