(ブルームバーグ):2025年の春闘は、日本最大の労働組合の全国組織である連合から昨年を上回る高水準の賃上げ回答結果が示されているが、中小・小規模企業への波及は限定的で楽観視できないかもしれない。
信金中央金庫の地域・中小企業研究所が27日発表した調査によると、今年ベースアップ(ベア)を予定している企業は約51%にとどまった。同調査で回答を得た1万2817社のうち97%は従業員100人未満で、労働組合を持たない企業が多い。集計対象組合の7割超が従業員100人以上である連合の発表(19日時点)では、約66%がベアを予定している。
日本銀行は経済・物価が見通し通り推移すれば利上げを継続する方針を維持している。植田和男総裁は、賃金・物価の好循環はおおむねオントラック(想定通り)で、特に春闘の1次集計は「オントラックの中でもやや強め」との認識を示していた。ただ、国内雇用の約7割を占める中小・小規模企業を対象とする信金中央金庫の調査結果は、賃上げが社会全体に波及する難しさを示唆している。
第一生命経済研究所経済調査部の星野卓也主席エコノミストは、連合の数字は「代表性がそれほど高くないことがここ1年で見えてきた」と指摘。24年春闘で獲得したベア3.56%に対して、サンプル替えの影響を受けない共通事業所ベースの所定内給与は3%を下回って推移していることを挙げた上で、日銀は「あまり春闘の賃上げ率に依拠し過ぎない方がいい」とみる。
同調査によると、賃上げを行わない企業のうち最も多い理由の一つは不十分な価格転嫁だった。中小企業庁が昨年実施した調査によると、コスト上昇分を全額価格転嫁できたのは1次請け企業で約3割を占めたが、サプライチェーン下位の4次請け以下の階層では1割程度にとどまった。
中小企業家同友会全国協議会の中山英敬幹事長は、賃金分まで価格に転嫁するのは「そう簡単に飲んでもらえない」と指摘。価格転嫁に対する姿勢は前向きに変わってきたものの、労務費の転嫁は「企業内努力で対応してほしいとの声も聞く。なかなかすんなりは行かず、非常に苦しい局面にあるというのが現実だ」と語った。
低い組合組織率
中小企業は労組の組織率が非常に低く、従業員の交渉力が弱いことも賃上げの波及を妨げる要因になっている。厚生労働省によると、昨年の労組の推定組織率は16%で過去最低を更新。従業員100人未満の企業ではわずか0.7%だった。1人平均賃金の改定率は労組ありで平均4.5%だったのに対し、労組なしでは3.6%。
連合の芳野友子会長は21日の会見で、賃上げや処遇改善に向けて「健全な労使関係があるからこそ労使のいい関係が保っていける」と発言。組合のメリットを企業や労働者に理解してもらい、組織化に結び付けていきたいと語った。
今回の調査では地域間の賃金格差も浮き彫りになっている。特に南九州など地方で中小企業の賃金上昇の勢いが弱い。地方創生を看板政策に掲げる石破茂首相にとっては大きな課題となる。
社会全体として賃金の底上げが実現しなければ、個人消費の力強い回復も見込みにくい。地域・中小企業研究所の品田雄志主任研究員は、中小企業は比較的所得が低い労働者を多く雇用しており、こうした層は消費性向が高いと指摘。「そういったところの賃金が上がってこないと、景気の押し上げは限定的になってしまう」と語った。
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