(ブルームバーグ):中国との戦争が起きた場合でも、台湾は意外なほど強固な防御を備えている。湿地や岩礁、コンクリート障壁が点在する海岸線、成人男性を対象とした徴兵制、有事の際に堅固な戦闘拠点として機能する高速道路や空港などだ。いわば、鋭い毛を持つヤマアラシのように攻めにくい構造となっている。
だが、このヤマアラシにも弱点があり、イラン戦争がそれを浮き彫りにした。エネルギーだ。
台湾の港には年間約3万9000隻が入港しており、エネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡を通過する約3万隻を上回る。入港貨物の約5分の1は石炭や石油、精製燃料、天然ガスとなっており、電力網の85%、道路交通の99%を支えている。これらの燃料の大半は限られた港を経由しており、その多くは中国大陸沿岸に面し、最短で約130キロメートルしか離れていない。
イラン戦争は、この構造のリスクを示している。中国は台湾に上陸することなく、イランによるホルムズ海峡での措置と同じく、封鎖を実行することが可能だ。そうなれば、台湾は数週間のうちに停電に陥りかねない。中国の艦隊は近年の拡張によって、原材料の貿易を遮断できる規模に達したと、台湾当局は昨年まとめた4年ごとの防衛戦略見直しで結論付けた。

アジアの安全保障を専門とする元米情報当局者、ロニー・ヘンリー氏は「人民解放軍は航路や港に機雷を敷設し、港湾施設や物資輸送ルートに打撃を与え、船舶を撃沈したり、意図的に船を沈めたりして障害物とし、海路をふさぐだろう」と分析した。
また、米国の艦船が攻撃を受けながら機雷を除去し、低速の貨物船を台湾の港まで護衛する必要に迫られる可能性もあると、ヘンリー氏は指摘。「これを一度ではなく、戦争が続く限り週に何度も繰り返さなければならない」と述べた。
これは恐ろしいシナリオであり、台湾の化石燃料輸入依存の高さが状況をさらに深刻にしている。域内の備蓄は極めて不十分で、液化天然ガス(LNG)は需要の11日分、石炭が約40日分、石油は90日分しかない。これらが尽きれば、最終的に降伏に至る可能性も否定できない。

台湾政界はこの緊急性を十分に認識してこなかった。1980年代半ばには電力の半分以上を原子力発電が担い、原発の燃料交換も2年に1度で済んだ。だが、与党・民主進歩党(民進党)の理念には反原発が深く根付き、唯一残っていた原子炉も昨年5月に停止された。公営の台湾電力は先月、この施設の再稼働を申請したが、早期実現は見込みにくい。
野党・国民党も、燃料輸入を必要としない風力や太陽光の拡大を妨げてきた。同党の支持基盤である農村部の利害関係者は、農地や海上での大規模再生可能エネルギー開発に強く反対し、低コストでクリーンな電力の導入を阻んでいる。
人口密度の高い台湾にはこうした設備を置く余地がないとよく言われるが、それは事実でない。ほぼ同じ面積のオランダは、風力と太陽光で台湾の2倍の電力を生み出している。台湾では農業用地の約10%(約5万4000ヘクタール)が観光用途に使われ、さらに同規模の農地が採算難で放置されており、多くの土地が十分に活用されていない。これらを合わせれば、台湾の太陽光発電に使われる用地(4684ヘクタール)の20倍余りに達する。
台湾のエネルギー安全保障の構築が政治的に困難だということは確かだが、それは言い訳にならない。完成に近かった4基の原発の運転を維持し、韓国のように2012年以降にさらに4基が新たに稼働していれば、原子力で電力の3分の1を賄えていた可能性がある。

政治や保護主義が洋上風力の発展を長年阻まず、未利用の農地や植林地5万ヘクタールに太陽光を設置していれば、再生可能エネルギーでさらに半分を供給できた可能性もある。輸入依存が電力の20%未満であれば、有事にも高い耐久力を持ち得ただろう。
昔から、強大な敵に対抗する小規模で豊かな国家や都市は、自給のためにあらゆる努力を払ってきた。カルタゴやコンスタンティノープルでは貯水槽と穀物の貯蔵庫が備えられ、中国の襄陽や樊城がフビライ・ハン率いるモンゴル軍に対して5年間持ちこたえたのが典型例だ。
台湾が同様の備えを怠ってきたことで、脆弱(ぜいじゃく)性が浮き彫りとなった。手遅れになる前に、今回の危機が弱点を克服する契機となるよう願うばかりだ。
(デービッド・フィックリング氏は気候変動とエネルギーを担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ブルームバーグ・ニュースやウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズでの記者経験があります。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:The Iran War Has Exposed Taiwan’s Achilles’ Heel: David Fickling(抜粋)
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