26日の日本市場は長期金利の上昇(債券価格は下落)が続いて16年半ぶりの高水準を更新した。日本銀行の植田和男総裁が物価目標まであとわずかとの見解を示して、追加利上げへの警戒が強まった。株価は上昇して円は下落した。

植田日銀総裁

長期金利は一時1ベーシスポイント(bp)高い1.585%に上昇、リーマンショック直後の2008年10月以来の水準を連日で更新した。植田総裁は国会答弁で基調的な物価上昇率の2%目標について「もうちょっとだと考えている」と語った。債券相場の地合いが悪い中での日銀の情報発信を受けて債券が売られた。

年度末を控えて金融市場全般に投資家の様子見姿勢が強まっており、トランプ米政権の関税発動も4月2日に迫り詳細や市場への影響が読みにくい。特に債券市場では期末の持ち高調整や27日の40年国債入札を前に売り圧力が目立った。

みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストと三原正義マーケットアナリストは26日付リポートで、金融市場は4月2日にかけてトランプ関税の品目や範囲などを巡る報道で上下動する展開が続きそうだと予想した。同時に関税一部免除や延期が含まれるというのがコンセンサスとなりつつあり、市場反応は鈍くなってきているようだとした。

債券

債券相場は下落し、長期金利は一時1.585%と08年10月以来の高水準を付けた。日銀の追加利上げに対する警戒感から売り優勢だった。

金融政策変更の影響を大きく受ける中期債への売り圧力が続いた。新発2年債利回りは0.88%、新発5年債利回りは1.18%と、ともに08年以来の高水準を連日で更新した。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、年度末で大手金融機関は決算を固めており、買いを控えていると指摘した。

その上で「新年度入り後も生命保険会社は金利水準の魅力は高いが足元の地合いが悪いほか、日銀利上げ継続による金利先高観も強いので、買いを積極化するとは期待しづらい」との見方を示した。

岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、東京都区部消費者物価指数(CPI)や日銀決定会合の主な意見、植田総裁の国会答弁も含め、利上げ継続が意識させられる情報やデータが続いていると述べた。

さらに「決算期末を控えポジション調整の売りで債券相場の地合いが悪く、足元で金利がかなり上がったからと言ってすぐに買いが入る訳ではない」と語った。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

トランプ大統領が関税免除について言及したことで通商政策の影響に対する懸念が和らぎ、株価は連日で上昇した。年度末を控えて配当金(ETFの場合は分配金)の再投資が見込まれていることも市場を支えた。

SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は「トランプ関税が少しマイルドになるというのは米経済にとってポジティブなので、それは少し株価を支えているだろう」と述べた。同時に「対象の国がどこになるのかまるで分からないとして、日本の投資家が完全に様子見で「商いの進み具合は悪く、きょうの動きは限定的だろう」とも指摘した。

東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、配当の再投資による買い圧力が27、28日で1兆5000億円ほどと市場では見込まれており、需給改善の期待もマーケットの追い風となっていると述べていた。

個別銘柄の動きでは任天堂がゴールドマン・サックスのアナリストによる買い推奨再開を受け、一時6.4%まで上昇した。新型ゲーム機「スイッチ2」がユーザー数を押し上げるという期待が出ている。任天堂はTOPIX上昇に最も寄与し、日経平均株価の上昇率上位にも入った。

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=150円台後半に下落。日本株が続伸し、リスク志向の強まりを背景に円売り・ドル買いが優勢だ。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、株価上昇でリスク志向が継続しており、円の買い持ちポジションを手じまってドルを買い戻す動きが優勢になっていると語る。

東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、ドル・円相場が150円を割り込む水準では実需のドル買いが入ると話す。投機筋の円買いポジションはなお歴史的高水準にあるが、日米の金利差によりポジション維持にコストがかかるため、「投機筋もそろそろ苦しくなってきているのではないか」と言う。

三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、植田総裁の国会答弁は19日の会見から変わっていないと指摘。ドルが上昇しているのは「残っていた円ロングを吐き出す動きではないか」と話す。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:日高正裕、アリス・フレンチ.

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