トランプ米大統領が相互関税を発表するとみられる4月2日を約1週間後に控え、適用除外などを求めて各国が対応に追われている。

欧州連合(EU)のシェフチョビッチ欧州委員(通商担当)は25日、米国でラトニック商務長官およびグリア通商代表部(USTR)代表と会談する。一方、インド政府も25日、2国間貿易協定を話し合うため同国を訪問する米代表団に対して、相互関税の適用除外を要請する見通しだ。

トランプ氏は24日、自動車に対する関税を「非常に近い時期に」発表すると述べ、医薬品に対する関税も「そう遠くない将来のある時点で」明らかにすると述べた。ホワイトハウスで開催した閣議で発言した。ラトニック長官は閣議で4月2日に関税徴収を監督する「外国歳入庁(ERS)」の設立計画を発表し、「米国の権力と威信を回復する」と指摘。トランプ氏はこの仕組みにより米国民の税負担は軽減されるだろうと述べた。

トランプ氏は関税が貿易をより公平にするだけでなく、外交における他の交渉で米国の優位性を高め、財務省に巨額の歳入をもたらすとの考えを示している。

アイルランド首相は、トランプ大統領の関税へのアプローチがEU内の亀裂を露呈させるリスクがあると警告している。例えば、フランスは強硬な対応を主張する一方で、イタリアは「目には目を」といった報復措置に懸念を示している。

ブルームバーグは、トランプ米政権が今後発動する一連の関税は、これまで折に触れて警告してきたような「一斉射撃」ではなく、より的を絞ったものとなりそうだと報じた。ある政府関係者は24日、トランプ政権はまだ最終決定を下しておらず、4月2日の発表に特定産業に対する別の関税を含めるかどうか引き続き検討中だと述べた。

譲歩案の提示

アジアや欧州諸国の一部は、「米企業に不利」あるいは「ハイテク覇権争いで中国を利する」と米国が問題視する政策を撤廃することで歩み寄る姿勢をみせている。

英政府は4月2日までにデジタルサービス税の引き下げ、または完全撤廃を検討している。一方、 マレーシア政府は米エヌビディアの先端半導体について流通管理を強化する方針だと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。中国への流出阻止に向け、米国がより厳重な監視を求めたことが背景にあるという。

一方、対米関係で緊張が高まっている他の国・地域では、貿易戦争による経済的な痛みを和らげようとする動きが出ている。

カナダのカーニー首相は、米国の関税による打撃を軽減すると同時に、貿易と投資を促進する「国家再建」を掲げた一連の対策を発表した。企業が所得税や消費税の納付を一時的に猶予できる措置などが導入される見通しだ。

戦後の世界経済を支えてきたルールに基づく貿易体制がトランプ氏の関税で脅かされていることで、地政学的な同盟関係を再考する動きも出てきた。長年にわたる米国とのパートナーシップに疑念が生じていることが背景にある。

情報の部外秘を理由に匿名を条件に語った関係者によると、スペインのサンチェス首相は来月、中国を訪問し習近平国家主席と会談する予定だ。サンチェス氏はベトナムも訪問する計画だという。

一方、グリアUSTR代表は今週、中国側のカウンターパートと初の電話会談を行う見通しだと、事情に詳しい関係者が明らかにした。

原題:Trade Talks Ramp Up in Race to Avoid Trump’s April 2 Tariffs(抜粋)

--取材協力:Thomas Seal、Lucy White、Alex Wickham、Yuan Gao、Mackenzie Hawkins、Alberto Nardelli、Jenny Leonard、Jorge Valero、Daniel Basteiro、Lucille Liu、Josh Wingrove、Ben Westcott、Shruti Srivastava.

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