日本銀行の植田和男総裁は24日、日銀が保有する長期国債について、今後の金融調節上、必要が生じた場合には売却も排除しないとの見解を示した。午後の参院財政金融委員会で答弁した。

植田総裁は午前の同委員会で、日銀が保有する大量の国債は「直ちに市場で売却することはできない状況」とした上で、買いオペの金額を保有国債が満期になる量よりも低く保つことによって削減を進めていると説明。午後の答弁では、「今後金融調節上必要が生じた場合の売却の可能性まで排除しているところではない」と語った。

日銀の植田和男総裁

日銀は昨年7月の金融政策決定会合で決めた国債買い入れの減額計画に沿って段階的に購入額を減らしている。買い入れ額を原則として四半期ごとに4000億円程度ずつ減額し、2026年1-3月に3兆円程度とする計画だが、期限の26年3月でも500兆円を超える残高が維持される見通しだ。

植田総裁は午前の同委員会では金融政策運営について、基調的な物価上昇率が2%に向けて高まっていく見通しが実現していけば、「それに応じて金融緩和度合いの調整を続けていく」と改めて説明。その上で、政策の目的はあくまで物価の安定であるとし、「財務への配慮のために必要な政策の遂行が妨げられることはない」と語った。

適切な金融政策運営を行う能力は、「財務が赤字になったり、一時的に債務超過になっても支障を生じない短期金利の調整を行う」ことによって、物価の安定の実現が中長期的には可能になっていくとの認識も示した。

日銀は19日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めた。植田総裁は記者会見で、見通しの中の強めの結果となった春闘の一次集計を含めて賃金・物価は想定通りとする一方、海外発の不確実性が急速に高まっているとし、追加利上げはデータ次第で判断していく姿勢を示した。

他の発言

  • 日経平均が1000円下落につきETF評価益は約1.8兆円減少する計算
  • 保有国債は償却原価法採用、評価損発生・拡大でも決算上の期間損益に影響せず
  • 通貨の信認は適切な金融政策運営で物価安定を図ることを通じ確保される
  • 今のところ過熱感は見られていない-大都市圏中心の不動産価格上昇

(植田総裁の発言の詳細を追加して更新しました)

--取材協力:氏兼敬子.

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