(ブルームバーグ):トランプ米大統領は人工知能(AI)とこれを支えるデータセンターの促進に全力を注いでいる。だが、自らが課す関税によって、データセンターの構築に多額の資金を投じている米企業のコスト負担をさらに増やす恐れがある。
データセンターは目下、活況を呈しており、米成長にも大きく寄与している。だが、データセンター内部に設置される設備は、多くが外国からの輸入品であるため、貿易戦争が激化すれば目算が狂いかねない。
米国のコンピューター機器輸入先の上位2カ国である中国とメキシコに対して、トランプ氏はすでにそれぞれ20%と25%(一部は適用免除)の関税を課している。この他、鉄鋼・アルミニウム関税も発動した。さらなる関税導入も検討されており、データセンター産業に部品などを供給しているアジア諸国などが関税の対象となる可能性がある。重要部品である半導体にも、トランプ氏は関税を課す考えを示している。

資金力のある企業なら、AI開発にまい進する上で追加コストは障害にならないかもしれない。それでも、低コストで高性能のAIモデルを開発したと主張するDeepSeek(ディープシーク)の登場で、巨額のAI投資に対しては視線が厳しくなっており、コスト増は新たな逆風となる。貿易戦争が激化しサプライチェーンが混乱すれば、プロジェクトの費用はさらに膨らむか、遅延もあり得そうだ。
フィッチ・ソリューションズ傘下BMIのデジタルインフラ担当アナリスト、ニッコロ・ロンバティ氏は「関税が世界全般に適用されれば、米国のデータセンター市場が著しい下振れリスクに直面する恐れがある。大量に購入する材料や部品を世界のサプライチェーンに依存しているためだ」と述べる。
トランプ氏は2期目就任以降、米国内のデータセンター建設とAI技術開発を推進している。その皮切りとなったのが、ソフトバンクグループとオープンAI、オラクルが主導するAIインフラへの新たな大型投資だ。
ブームはすでに始まっており、JPモルガン・チェースのアナリストによると、昨年の米国内総生産(GDP)を最大0.3ポイント、金額にして約1000億ドル(約14兆9900億円)押し上げた。今年も同じような数値になると同行では予想している。
ここ数カ月にもアルファベット傘下のグーグルやメタ・プラットフォームズなどが数千億ドルに上る新たなプロジェクトを発表した。計画中のプロジェクトがすべて予定通りに進み、建設期間中に支出が均等に分散されると仮定すると、投資額は今年64%増、2026年にはさらに14%増となり、27年に1350億ドルでピークに達する可能性がある、とブルームバーグ・インテリジェンス(BI)では分析している。
業界幹部らはトランプ大統領の関税に懸念を抱いており、アナリストも予算超過とスケジュール遅延のリスクを指摘している。データセンター内の設備のうち、どの程度が外国からの輸入なのかを正確に把握することは難しい。国内で調達された部品や材料であっても、価格が上昇する可能性もある。第1次トランプ政権時代の貿易戦争中にも同じような余波がみられた。
トランプ政権はエネルギー価格押し下げに向けた規制緩和と生産拡大の奨励が、企業の関税コスト相殺に寄与すると考えている。政府高官は、電力が主なコストであるデータセンター業界にとってこれは重要な点だと話す。
一方、エネルギーコンサルティング会社ウッド・マッケンジーのサプライチェーン・データおよび分析担当シニア・アナリストのベン・ブーシェ氏は「データセンター向けの電気機器に対する関税の影響はかなり大きいだろう」とみている。
トランプ氏がこれまで打ち出した通商政策の結果、輸入および国内製造のコストが上がり、電力用変圧器の価格は約8-9%、開閉装置の価格は6-7%、配線用遮断機の価格は3-4%、ワイヤーやケーブルの価格は6-7%いずれも上昇すると、同氏は試算している。

原題:Trump Loves AI But His Tariffs Ramp Up Costs for Data Centers(抜粋)
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