与党にも野党にも一種の賭け

与党にとっても野党にとっても、政局を起こして石破政権を総辞職に至らしめることは、一種の賭けになる。衆院が少数与党の状況下、自民党を中心とする政権が継続する可能性と、野党結集による政権交代となる可能性の両方が存在する。

自民党を中心とする政権が継続するには、石破政権誕生時と同様、首班指名選挙において野党の一部が結集せずに独自候補を立てるか、もしくは野党の一部が連立政権に加わる必要がある。逆に、野党結集による政権交代となるには、首班指名選挙で文字通り野党が結束する必要がある。

キャスティングボードを握る野党のうち、国民民主党は与党との協力にも野党結集にも消極的とみられる。予算案で与党に協力し、かつ立憲民主党と選挙協力を模索する日本維新の会が、どちらに与するのか、もしくは独自路線を歩むのかが注目されよう。

自民党総裁選があるとすれば?

商品券配布問題により石破政権の内閣支持率が低迷、乃至は低下が予想される状況下では、どちらかといえば野党発というよりも与党発で政局が起きやすいだろう。野党にとっては、できれば石破政権を相手として参院選に臨みたいはずだ。一方、与党にとっては新しい「顔」で参院選に臨みたいとのインセンティブが働きやすい。

ただ、上述の通り、与党にとって「石破おろし」は政権交代に繋がり得る一種の賭けになる。実際に「石破おろし」に向かうか否かは、あくまでも内閣支持率次第ということになろう。

自民党が「石破おろし」を起こして自民党総裁選を実施する場合、予算や関連法案が成立した後、支持率動向も見極めて4 月後半から5 月頃に掛けて、ということになろう。今のところ参院選は7 月20 日に投開票となる見通しであり、6 月には与野党とも公約取りまとめなど選挙モードに入るだろう。また、参院選の約1 ヶ月前の6 月22 日には東京都議選が実施される。都議選や参院選に間に合うタイミングが模索されよう。

ダブル選挙の可能性

石破政権の支持率が急速に高まるケース、もしくは「石破おろし」後に発足する自民党新政権が高い支持率を獲得するケースでは、参院選に合わせて衆議院を解散、衆参同日選挙(ダブル選挙)とする可能性があろう。

公明党が否定的なこともあり、ダブル選挙は1986 年7 月以来、長らく実施されていない。だが、衆議院が少数与党の状態であれば、状況打開のためダブル選挙とするインセンティブが自民党には存在する。衆院選と参院選が重なる場合、野党において選挙協力の難易度が上がるという理由もある。

なお、ダブル選挙の場合、衆院解散により通常国会の会期末が前倒しとなれば、参院選(と衆院選)の日程が、7 月20 日よりも早まる可能性がある。公職選挙法の規定等に基づけば、最短で6 月29 日の可能性がある。

情報提供、記事執筆:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト 宮前 耕也

2025年3月18日発行レポートより転載