石破首相による商品券配布の問題が取り沙汰され、政局に発展するとの見方が
浮上している。当面の政治日程を踏まえ、春に政局が起こるとすればどのような
シナリオとなるか整理してみる。

予算成立と引き換えに退陣を迫られるわけではないが…

巷間では、商品券配布問題の余波により、当初予算の年度内成立が困難化し、石破首相が退陣を迫られる可能性が取り沙汰されている。この点について整理してみる。

予算案は衆議院で修正された上で3 月4 日に可決、参議院へ回付された。その後、石破政権は高額療養費の自己負担引き上げ見送りを決定したため、予算案が参議院で再修正される。その再修正案を参議院が可決後、衆議院へ再度回付される。与野党は年度内に当初予算の再修正案を衆議院で再可決・成立させる方向で調整していたとみられる。

だが、商品券配布問題で参議院での審議が難航する可能性が出てきた。野党は、政権担当能力を示す観点では日程闘争を望んでいないとみられるものの、政権の監視役を果たす観点では商品券配布問題を追及する必要があろう。再修正案の参議院での可決や衆議院への再回付、可決・成立が遅れる可能性が出てきた。

もっとも、衆議院で既に可決された修正案は、4 月2 日に自然成立する。再修正案の年度内成立が間に合わずとも、この修正案が自然成立すれば、暫定予算を組む必要はなく、実務的に大きな問題は生じないとみられる。すなわち、石破首相が予算成立と引き換えに退陣を迫られるわけではないと考えられる。無論、参議院予算委員会等の場で、石破首相が商品券配布問題の追及を受け、対処に窮するようであ
れば、内閣支持率などに影響し得る。

与党が起こす政局と野党が起こす政局

政局が本格的に生じるとすれば、予算成立後の4 月以降であろう。与党が起こす政局と野党が起こす政局の2 種類が考えられる。

まず、与党が起こす政局について。商品券配布問題等を受けて、内閣支持率が急速に低下するようであれば、与党内で石破首相を参議院議員通常選挙の「顔」として戦えないとの見方が広まり、いわゆる「石破おろし」が生じ得る。今のところ、非主流派の一部議員から退陣要求が出ているが、この動きが主流派の有力議員にも広がるようであれば、情勢は一気に流動化するかもしれない。党内における自らの支持基盤が必ずしも強固ではない石破首相にとって、主流派からの支持は不可欠だ。主流派から「石破おろし」が生じれば、石破政権は継続しづらい。自民党総裁選を実施した上で、石破内閣が総辞職、新総裁のもと首班指名選挙に臨む、という展開に至り得る。

次に、野党が起こす政局について。例年、野党は会期末に衆議院で内閣不信任決議案を提出するケースが多い。通常は否決されて、時の政権が継続する。だが、現在は少数与党であり、予算案の衆院可決に際して与党に協力した日本維新の会が賛成に回れば、不信任案が可決し得る状況だ。仮に可決される場合、石破政権は10 日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければならない。