(ブルームバーグ):トランプ米大統領や支持者は、政権1期目の鉄鋼・アルミニウム関税は米金属メーカーの救済につながったと主張する。2期目の関税措置は米東部時間12日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動された。
だが今回、鉄鋼とアルミだけでなく、いずれかの金属を原料とする1500億ドル(約22兆円)強相当の輸入消費財にも関税が直接賦課される点が大きく異なる。
少年野球選手らが使うアルミ製バットから、釣り具、ローラースケート、裁縫針などあらゆるものに最低25%の新たな関税が賦課される。最愛の人とのお別れさえも高額になりそうだ。埋葬用棺おけも対象だからだ。
より広範囲な品目を標的することは、トランプ氏の貿易政策戦略の変化に沿う動きで、エコノミストや金融市場が米景気減速と保護主義の幅広い影響に懸念を強める理由を示している。

トランプ氏がホワイトハウスに復帰してからの7週間、関税に関する発表の多さにエコノミストや投資家は驚かされている。だが多くの米国人にとっては、新たな関税の対象範囲の広さが前回との最大の違いであり、日常生活における輸入品依存度の高さを浮き彫りにしている。
消費者へのこうした打撃は、すでに反発を招いている。世論調査では、関税政策が不評である主な理由として、物価への影響が挙げられた。ブルームバーグ・ニュースの委託でハリス・ポールが先月実施した調査によると、関税が物価上昇につながると米成人の約60%が予想した。
調査によると、米国の輸入業者が通関時に支払う関税コストは、最終的に消費者が負担することが多い。しかし、関税などの税金が個々の商品価格に与える影響は、表面的な税率を上回る可能性があると、ミシガン大学ビジネススクールのエコノミスト、ニルパマ・ラオ氏は述べている。
「絶好の機会」
企業は関税やその他の税金を、単にコスト増を相殺するだけではなく、さらに値上げする口実として利用する傾向にあるとラオ氏は指摘する。
例えば、ローラースケートの想定価格が新課税で21.12ドルに上がった場合、販売する企業は、よりなじみのある価格である21.99ドルに値上げする可能性が高く、「値上げを関税のせいにする絶好の機会だ」とラオ氏は言う。
12日に発動された鉄鋼・アルミ関税に加え、トランプ政権はすでに中国からの輸入品に20%の一律追加関税を賦課している。これらは、トランプ政権1期目の対中関税では影響を受けなかったテレビやスマートフォンなどの家電製品の価格を押し上げている。ウォルマートやベスト・バイなどの大手小売りも、販売に打撃が及ぶ可能性について警鐘を鳴らしている。

消費財への打撃をいとわない姿勢は、トランプ大統領の新たな貿易戦争における戦略の意図的な変化と目標の転換の一端であると考えられる。
2019-20年に大統領経済諮問委員会(CEA)に所属したエコノミスト、アナ・ウォン氏によると、トランプ氏の顧問らは1期目の対中関税で、消費者向け製品の生産に使用される部品などいわゆる中間財を対象とするよう努めていたが、優先事項は変化したようだ。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のチーフ米国エコノミストを現在務めるウォン氏は、関税や政府規模縮小の取り組みが消費と成長に与える影響は「短期的には今のところマイナスだ」が、「トランプ氏は目先の痛みに耐えて長期的な利益を得ようとしているようだ。これがモットーのようだ」と分析した。
原題:From Baseball Bats to Caskets, Trump Tariffs Set to Hit Home (2)(抜粋)
(関税発動について追記し、エコノミストのコメントを加えて更新します)
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