トランプ米政権が名門大学への助成金取り消しや寄付基金への増税方針を打ち出しているが、各大学はそうした動きに対抗するためロビー活動を活発化させている。

トランプ政権は7日、ニューヨークの名門校コロンビア大学への総額約4億ドル(約590億円)相当の助成金と契約を取り消すと発表。学内での反ユダヤ主義活動への対策が不十分だというのが理由だ。

こうした措置は、名門大学への圧力を強めるトランプ大統領の戦略の一部に過ぎない。各大学は、寄付基金への増税に向けた複数の法案にも対応を迫られている。

ハーバード大学は、ボンディ司法長官が以前働いていた共和党寄りのロビー会社、バラード・パートナーズを起用。

プリンストン大学の学長は、同大が保有する341億ドル規模の基金を守るためワシントンで過ごす時間を増やしており、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学長は今年既に首都を3回訪問しているという。24校から成るグループは、ズームでオンライン会議を開催し、今後の方針について戦略を練っている。

コロンビア大は反ユダヤ主義に対処し、政府と協力して助成金復活に努めると表明。だが、共和党は良識や実力主義を犠牲にして進歩的な価値観を推進していると見なされる高等教育機関を標的に定めている。

ペンシルベニア大学の学長によると、こうした方針は大学側にとって「存続に関わる脅威」になっているという。

現行では、学生1人当たり50万ドル以上の寄付基金を有する私立大学が課税対象となっている。大学側は、寄付基金は奨学金の財源となっており、増税は最も困窮している学生への負担を増すことになると反論している。

米プロバスケットボールNBAのスター選手で卒業生のステフィン・カリー氏をバスケットボールチームのアシスタントゼネラルマネジャーとして採用したことで知られるデビッドソン大学は、同大が昨年支払った120万ドル相当の税金で、自校の15の全額支給奨学金に充当することができたはずだと指摘。

一方、2年制公立大学の平均費用に基づくと、仮定では同じ額でコミュニティーカレッジの学生300人分の年間授業料を賄うことが可能だと批判する向きもある。

デビッドソン大のダグラス・ヒックス学長は、同大の14億ドル規模の寄付基金を守るため、ノースカロライナ州シャーロット郊外にあるキャンパスからワシントンまで出向き、議員らに直接働きかけている。

ヒックス氏はインタビューで、「より大学で学びやすい学費にするのが目的であるならば、これは効果的なアプローチではない」と語った。同校は学生の経済的なニーズを100%満たしているという。

寄付減る恐れ

トランプ政権による連邦助成金削減の可能性が高まる中、ハーバード大は10日、一時的に採用を凍結すると発表。スタンフォード大学やMIT、コーネル大学も既に同様の措置を講じている。

第1次トランプ政権下で行われた2017年の税制改革では、寄付基金への課税措置が実施された。この措置により、23年には大学56校から3億8000万ドル余りが徴収された。

だが、この措置による影響が及ぶのは、米国の私立非営利学校1700校のうちのほんの一部に過ぎず、その大半はエール大学やスタンフォード大、シカゴ大学などの名門校だ。

トランプ氏とバンス副大統領はいずれも、寄付基金への課税を提案してきた。寄付基金への課税強化は、下院共和党内で最近回覧された政策メニューに盛り込まれているほか、今期の連邦議会では少なくとも3つの法案が提出されており、税率引き上げや対象範囲の拡大を提案している。

そのうちの1つは、税率を1.4%から法人税率と同程度の21%に引き上げることを求めている。タックス・ファンデーションの試算によると、この措置は10年間で700億ドル相当の税収をもたらすという。

 

大学側が抱いている懸念の一つは、寄付基金への課税引き上げにより、富裕層が寄付を控える可能性があるということだ。

インディアナ州にあるワバッシュ大学では、男子学生約900人が学んでいるが、この課税措置による影響を受ける可能性がある。同大の寄付基金は約4億3000万ドルで、学生1人当たり50万ドルという課税対象基準に迫っている。

同大のスコット・フェラー学長はインタビューで、「われわれの寄付基金はハーバード大の1%にも満たないが、名門校と同じ税率で課税される」と指摘。この問題に対処するため、インディアナ州の連邦議会議員に働きかけ、理解を求めていると明らかにした。

ハーバード大のキャンパス

原題:Wealthy Colleges Fight to Protect Their Riches From Taxation (1)(抜粋)

--取材協力:Akayla Gardner、Elizabeth Rembert.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.