(ブルームバーグ):トランプ米大統領は11日、関税政策が米経済を低迷させるとの懸念で株式相場が急落したことを深刻視しない考えを示し、米国がリセッション(景気後退)に陥るとは予想していないと述べた。
トランプ氏はホワイトハウスで、リセッションを「全く予想していない。この国は好景気になるだろう」とコメント。相場は上昇したり下落したりするが、「われわれは国を再建しなければならない」と付け加えた。
金融市場は3週間にわたり不安定な展開が続き、11日の取引では、米最大の貿易相手国カナダに対する新たな関税引き上げの可能性を大統領がちらつかせたのを受け、株価が下落。S&P500種株価指数は一時、2月の高値から10%下落する場面もあったが、買い注文が入り下げ渋った。
その後、トランプ氏がカナダに対する50%の鉄鋼・アルミニウム関税の警告を見直す意向を示したことで下げ幅縮小につながったものの、S&P500種はなお前日比マイナス圏で取引を終えた。
最近の相場急落の背景には、関税導入や連邦政府の支出・職員の大幅削減で米経済が厳しい局面を迎える可能性があるとの大統領や政府高官の警告があった。トランプ氏は9日にFOXニュースが放送したインタビューでリセッションの可能性を否定しなかった。
トランプ氏は長らく市場を、自身の経済政策の正当性を映す尺度とみなしてきたが、ここ数週間はそれを重要視せず、11日も引き続きそうしたスタンスを維持した。
市場の不安定さについて問われたトランプ氏は「いや、気にしていない」と答え、「株式や債券など、あらゆるものを買うことで、一部の人々が大きな利益を得ることになると思う。偽りの経済ではなく、真の経済が生まれるだろう」と語った。
それでも、その数時間後に開かれた財界ロビー団体ビジネスラウンドテーブルの会合に集まった企業経営者らに対し、さらなる関税への備えを呼びかけ、税率がさらに上昇する可能性もあると告げた。大統領は、関税引き上げは、企業が米国に事業を移す可能性が「一層高まる」ことを意味するだけだと話した。
トランプ氏は「最大の勝利は関税ではない。彼らが国内に移転して生産を行えば最も大きな勝利になる」と指摘した。
不法移民の大規模強制送還や、連邦政府の職員と支出を大幅に削減するイーロン・マスク氏主導の動きなど、他の政策も米国の成長を脅かす可能性があるが、エスカレートする貿易戦争はリスク評価の中心にある。エコノミストらは、消費者物価が上昇し、外国の報復措置が米国の輸出業者に打撃を与えると指摘し、これら全てが成長の足かせになる恐れがあるとしている。
大方のエコノミストは、差し迫った米景気後退リスクを見込んでいないが、個人消費や消費マインドの弱まりや中小企業の不安の高まりといった幾つかの警戒シグナルは出ている。2月の米雇用者数は全般に堅調に推移したが、失業率は4.1%に上昇した。連邦政府の官僚機構のスリム化を目指すマスク氏の取り組みは、雇用に関する新たなリスクをもたらす。
トランプ氏は、この取り組みが民間セクターに成長をもたらすとしており、11日もこれを弁護。「ささいな問題はあったが、大きなトラブルではなかった」と述べ、「将来に向けて多額の金額を節約した」と語った。
原題:Trump Walks Back Latest Tariff Threat, Plays Down Recession Talk、Trump Says He Doesn’t See US Recession, Downplays Market Turmoil(抜粋)
(トランプ大統領の発言を追加して更新します)
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