日本銀行は今月に開催する金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める公算が大きい。1月に利上げしたばかりであるほか、世界経済の不確実性が増しているとの考えが背景にある。複数の関係者への取材で分かった。

関係者によると、日銀は日本の経済・物価は引き続き見通しに沿った動きと判断しているが、現状は前回の1月会合での追加利上げの影響を点検する段階にある。米トランプ政権による関税措置などの政策が国内外の経済や物価、金融市場に与えるリスクは1月会合時点よりも高まっているという。

一方で消費者物価は日銀目標の2%を上回って推移し、2025年春闘の賃上げ要求が32年ぶりの6%超えとなるなど賃金・物価は想定通りの改善を示しており、引き続き段階的な利上げで金融緩和度合いを調整していく局面にある。日銀は最終判断は下しておらず、18、19日の会合直前までに入手可能なデータを検討する予定だと関係者は述べた。

物価見通しは上振れリスクが大きいものの、少なくとも現時点で日銀が追加利上げのタイミングを早める状況にはないようだ。さらなる利上げは近いとの市場の見方とは対照的と言える。金利スワップ取引から算出される5月までの利上げ確率は約20%となっており、1月の政策決定直後から倍増している。

日銀は1月会合で政策金利の無担保コール翌日物金利の誘導目標を17年ぶりの0.5%程度に引き上げた。その後の良好な経済指標や政策委員からの利上げに前向きな発言などを受けて市場には早期利上げ観測がくすぶるが、内田真一副総裁は5日の講演と記者会見で、利上げは経済・物価の反応を確認しながら進めていけるとし、「毎回利上げしていくようなペースではない」とも語った。

日本最大の労働組合の全国組織である連合は6日、25年春闘の賃上げ要求が6%を超えたと発表した。これが市場の利上げ期待を高め、円相場は同日に一時1ドル=147円32銭と5カ月ぶりの高値を付けた。長期金利は7日に一時09年6月以来の水準となる1.53%まで上昇した。

日銀では、強い要求を背景に今年の賃上げは昨年と同水準になる可能性が高いとみていると、関係者は述べた。これは日銀の予想の範囲内だという。

関係者によると、一部の当局者は物価の上振れリスクの高まりに引き続き警戒感を示しており、4月30日と5月1日の会合での利上げが正当化される可能性がある。

1月会合直後にブルームバーグが実施した調査では、5割超は次の利上げ時期を7月会合と見込み、3月会合を予想したエコノミストはいなかった。

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