セブン&アイ・ホールディングスの次期社長となるスティーブン・デイカス氏は6日、北米コンビニ事業を運営するセブンーイレブン・インク(SEI)の新規株式公開(IPO)を通じて、同事業に対する正当な評価が得られるとの考えを示した。

デイカス氏は6日夜のブルームバーグのインタビューで、北米事業には非常に大きな価値があり、圧倒的なマーケットリーダーでありながらも「株式公開されていないため過小評価されている」と説明。IPOで「価値を解放する」と述べた。またIPOの実施は成長投資や自社株買いの資金だけでなく、株主の将来の利益も伸ばすことにつながると述べた。

同氏は日本で頻繁にコンビニを利用するといい、夕方に記者会見が開かれた6日にもセブンの商品を食べたという。今一番好きなのはサケおにぎりで、次に「子供の頃に食べた味を思い出す」と煮卵が入ったおにぎりを挙げた。日本の食品の品質が高いのは文化的な違いがあるとの認識を示しながら、米国など世界に拡大することが大きなチャンスになるとした。

セブンは同日、2030年度までに総額2兆円の自己株取得の形で株主還元すると発表した。企業価値向上に向けた戦略として26年下半期までにSEIを新規株式公開(IPO)させることなども打ち出した。セブン株は7日、一時前日比3.4%安の2048円を付けた。

次期社長のデイカス氏(6日・都内)

また赤字経営が続くイトーヨーカ堂など非中核事業を束ねるヨーク・ホールディングス株を8147億円で米投資ファンドのベインキャピタルに売却することで最終契約を結んだと発表した。セブンによる再出資などを経て、最終的にはベインがヨークHDの60%、セブンが35.07%、創業家が4.93%を保有することになる。

ヨークHDやSEIのIPOを通じて得られる資金を活用し、自己株式取得を実施する考えという。またセブン銀行の保有比率を40%未満に引き下げることも明らかにした。企業価値向上に向けた構造改革や株主還元などの施策を打ち出すことで、株主らの理解を得る狙いだ。セブンはカナダのアリマンタシォン・クシュタールから、セブン株価を上回る価格で買収提案を受けている。

6日に開いた会見で、デイカス氏は、クシュタール買収提案が企業価値を高めるかについて分からないと述べた。また買収に伴う米競争法当局の規制ハードルは高いとの見方を示した。一方で同社とは建設的に定期的に話し合いしていると説明し、同日も対話の機会をもったという。インタビューでもデイカス氏は常にクシュタールとコミュニケーションをとっていると明らかにした。

イトーヨーカ堂は祖業ながら、過去にアクティビスト(物言う株主)から切り離しを求められていた。ヨークHD株の売却で長年の懸案だった非中核事業の構造改革にめどがつき、セブンは今後、営業収益の約8割を占めるコンビニ事業に注力する。

セブンは昨年4月に公表したアクションプランでスーパー事業が自立して成長できる体制の確立を目指すと表明。クシュタールの買収提案後の同10月、構造改革の一環としてヨークHDを設立。スーパーの事業会社やロフト、ベビー用品を扱う赤ちゃん本舗など31社を移管し、出資を募っていた。

ジェフリーズ証券アナリストの栗山隼輔氏は、自己株取得枠として1000億円の予算が残っているが、7000億円超でヨークHDの売却が実現すれば、さらに自己株買い実施ができるとみていると4日付のリポートで述べていた。

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