トランプ米大統領は4日夜(日本時間5日午前)、上下両院合同会議で施政方針の演説を行い、自身の包括的な関税政策の実施に伴い「調整期間」が生じる可能性を認めつつも、経済的な逆風にもかかわらず米国の「勢いは戻っている」と主張し、同国経済の立て直しを推し進める取り組みを弁護した。

「関税は米国を再び豊かにし、再び偉大にするためのものだ。そして、それは実現しつつあり、すぐに実現するだろう」とトランプ氏は発言。「多少の混乱はあるだろうが、われわれはそれでOKだ。大したことではない」と語った。「何兆ドル」もの歳入をもたらし、自身が不公平と見なす貿易関係の是正につながるとした。

トランプ氏の演説は米国が重要な局面にある中で行われた。製造業活動が停滞する一方で、インフレ抑制の進展は足踏み状態にある。また、消費者信頼感は低下し、他国の株式市場と比較して米株価のパフォーマンスは見劣りするなど、データでは経済への新たなひずみが示されている。

トランプ氏が米国最大の貿易相手国に対して新たな関税措置を発動したのを受け、4日の米株価は大幅変動に見舞われ、S&P500種株価指数は昨年の大統領選前以来の安値で取引を終えた。

トランプ氏は2大貿易相手国のメキシコ、カナダ両国に新たに関税を賦課した。ただ、ラトニック米商務長官は4日、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の対象となる両国からの輸入品について、関税の軽減に向けた道筋を5日にも発表する可能性があることを明らかにした。

トランプ氏は演説で、「われわれのプライドが戻ってきた。自信も戻ってきた。そして、アメリカンドリームはかつてないほど大きく、そして素晴らしくなっている。アメリカンドリームは止められない。国は復活を遂げようとしている」と話した。

トランプ氏は自身の関税政策を弁護するとともに、新たな天然ガスパイプラインの建設を含む新プロジェクトに言及し、重要鉱物・レアアースの生産拡大を打ち出した。国内産業を強化するとしている。

アラスカ州のパイプラインについては、「世界最大級」だとし、日本や韓国を含む国々が「それぞれ数兆ドルの投資」して、この構想に協力したい考えだと述べた。重要産業を拡大する一方で、卵の価格からエネルギーコストに至るまで、消費者の根強い懸念に対処するための措置を講じているとも主張した。

上下両院合同会議での大統領の施政方針演説としては、過去最長の約1時間40分に及んだ。トランプ氏は自身が政治的な強みを持つ分野に多くの時間を割き、インフレに関する発言は比較的少なめだった。

インフレ・関税

トランプ氏はバイデン前政権から「インフレの悪夢」を引き継いだとし、自分の政策は既に経済回復に役立っていると指摘。「わが国の歴史上、最も偉大で最も成功した時代を切り開くのは、迅速でたゆまない行動以外の何ものでもない」と表明した。

他方でトランプ氏は、国内半導体業界支援法(CHIPS法)に基づき、米国内で半導体を製造する企業に総額520億ドル(約7兆8000億円)の支援を行うプログラムの廃止を主張。CHIPS法のプログラムから半導体メーカーに今後資金提供を行うつもりはないとし、ジョンソン下院議長にバイデン前政権下で成立したCHIPS法を「撤廃すべきだ」と訴えた上で、残った予算を債務削減などに充てるよう呼び掛けた。

貿易相手国・地域に関しては「彼らがわれわれに課す関税がどうであれ、われわれも彼らに関税を課す」と言明。さらに、「彼らがわれわれに課税するものは何でも、われわれも彼らに課税する。彼らが非金銭的な関税を課してわれわれを市場から締め出そうとするなら、われわれは非金銭的な障壁を設けて彼らをわれわれの市場から締め出す」と述べ、4月2日に相互関税を発動する方針を確認した。

鉄鋼・アルミニウム輸入に25%の関税を賦課する計画もあらためて示した。

ウクライナ・自動車

一方、トランプ氏のロシア寄りの言動によって、ウクライナでの戦争の解決を巡る見通しに不確実性が高まっているが、演説ではウクライナのゼレンスキー大統領から「いつでも鉱物資源合意に署名する用意がある」との意向を示す書簡を受け取ったと明らかにした。

トランプ氏によれば、ゼレンスキー氏は書簡で、ロシアとの戦争終結に向け交渉の用意があると表明し、書簡の内容を評価するとトランプ氏は述べた。ロシアからも和平の用意を示す強いシグナルを受け取ったという。

ゼレンスキー氏はこれに先立ち、ロシアの侵攻を終結させるため迅速に動く用意があるとし、和平を目指す途中で起きたトランプ氏との口論は「遺憾」だと強調。トランプ氏も3日、ゼレンスキー氏と公の場で激しく対立したにもかかわらず、ウクライナとの鉱物資源取引がなくなったとは思っていないと述べていた。

トランプ氏は先にウクライナに対する全ての軍事支援の一時停止を命じた。他方で、米政府当局者はウクライナとの鉱物資源のディール(取引)の復活に急きょ取り組んでいると、複数の関係者が明らかにした。

4日の議会演説でトランプ氏は、国内造船業強化のため、ホワイトハウスに造船に関するオフィスを設置する計画も発表。また、米3大自動車メーカーのトップと同日話をしたことも明らかにした。自動車メーカーは特に、米国内で組み立てられた自動車であっても、メキシコとカナダの製品に対する関税が価格引き上げにつながる可能性を懸念している。

原題:Trump Warns Americans of Economic Discomfort as Trade War Erupts(抜粋)

(詳細を追加して更新します)

--取材協力:内田良治.

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