政府の電気代支援は、ここ半年くらいは停止されたり、延長されたりを繰り返している。今のところ、2025 年 5 月以降の予定はない。ここで支援を止めるのが本筋だが、そうすると電気代が跳ね上がってしまう。エネルギー支援の見直しは、所得別の不公平感を考えると、ガソリン支援の方を先に廃止すべきだが、暫定税率廃止の検討が 3 党合意で決まっている。止めるに止められない価格支援を、どうフェイドアウトさせるかは重要な政策課題である。

価格補助の変動

電気代がまた上がりそうだ。2025 年 4月の電気料金は、政府の価格補助がほぼ半分に圧縮される。そして、5 月からは補助がなくなる。前年比でみた電力料金の伸び率は、2・3 月から 4 月、そして 5月にかけて跳ね上がりそうだ。

実は、こうした価格補助の変化によって、ここ半年間くらい電気料金は上下動を繰り返している。東京都区部の 2 月中旬の消費者物価は、政府の補助が再開されて、全体の伸び率が鈍化した(前年比の寄与度▲0.31%ポイント)。それまでの 2024 年 11・12 月、2025 年 1 月の支払いでは、価格補助が一時的に途切れて上がった。東京電力のモデル世帯(260kWh)の電気料金でみると、より実額の感覚がわかる。2024 年 9・10 月は▲1,040 円ほど政府の価格支援によって押し下げられていた。それ以降は支援が途切れたため、電気料金が跳ね上がった。

東京都区部 2 月中旬の物価指数に表れたのは、石破政権の発足直後の 10 月中旬に延長を発表していたものだ。この措置は、2025 年 1~3 月の使用期間に限って補助する扱いである(料金の支払いは 1 か月ずれて 2~4 月)。しかし、5 月以降のことはまだ未定である。

今後、どこかで支援を延長・復活するのではないだろうか。2025 年 7 月には参議院選挙がある。5月以降の電気料金は、そうした政治的思惑も強く働きそうだ。

少し話を戻して、目下の価格補助を少し細かくみてみよう。2025 年 2・3 月分は低圧▲2.50 円/kWhの割引になっている。平均モデルでは 260kWh×▲2.50 円/kWh=▲650 円になる。それが 4 月分は半減近くになって、▲338 円になる扱いだという。だから、価格支援は、3 月から 4 月にかけて支援幅が縮小することで、ここでも家計は値上がりを感じるだろう。

この価格支援については、メディアでよく見聞きするのだが、その全体像について議論されることは滅多にない。「高くなった」、「来月にまた上がる」といった感覚的な話題がほとんどである。この補助が始まったのは、2023 年 1 月の使用分からであり、スタートしたのはよいが、今や政治的にストップできなくなっている。価格支援を止めると電気料金が跳ね上がって、国民からの反発が強まるからだ。政治家にとっては、2024・25 年に国政選挙があることも、国民からの反発を買いたくない事情をつくっている。物価高対策として始めたは良いが、事実上、なし崩し的に随時延長という格好になっている。止めるに止められない政策と化しているのが実情だ。