10年物ドイツ国債の利回りが25日、同年限のスワップレートを5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回った。防衛支出の資金を調達するため借り入れ拡大を政治家が議論する中、2007年までさかのぼるデータで最も大きなスプレッドとなった。

スプレッド拡大は投資家が国債増発の可能性を織り込み始めた兆候だ。国債利回りとスワップレートのスプレッド(スワップスプレッド)は、市場が国債増発を予想するにつれ、国債がスワップと比較して弱くなる傾向があるため、今後の発行の重要な指標となる。

ドイツの国債発行残高は大きくないため、借り入れを増やす余地はある。しかし市場は、発行が増えた国債を吸収するに当たって、利回り上昇を求めている。

投資家は既に、総選挙後にドイツが緊縮財政ルールを緩和するとの見通しを織り込み始め、昨年11月に10年物利回りとスワップレートが初めて逆転した。

23日投開票された総選挙で保守系野党のキリスト教民主・社会同盟 (CDU・CSU)が勝利し次期首相就任が確実なメルツ氏は、最大2000億ユーロ(約31兆3000億円)の防衛特別予算を迅速に承認するため、選挙で敗北した社会民主党(SPD)との協議を開始した。ブルームバーグが報じた。

メルツ氏のCDUとSPDの当局者は、老朽化した軍備を強化するための資金を確保しようと、ドイツの政府借り入れに関する厳しい規制を回避する方法について話し合っていると、事情に詳しい関係者が非公式な協議だとして匿名を条件に語った。

3年前に承認された額の2倍に相当する新たなパッケージの採決を、現在の議会で強行する可能性を検討しているという。SPDとCDUの広報担当者はコメントを控えた。

ジェイミー・サール氏らシティグループのアナリストは「メルツ氏による、現行議会を利用して追加借り入れの余地を確保するという提案により、ドイツの選挙後の状況はさらに興味深いものとなった」とし、「これにより、防衛費への資金調達が当面の焦点となり、スワップスプレッドにさらに圧力がかかる可能性が高い」と指摘した。

メルツ氏はロシアの侵略に対抗するため、ドイツの軍事支出を拡大することを公約に掲げてきたが、次期議会では少数派政党が軍事支出拡大の試みを阻止できるだけの議席を確保したため、困難に直面する。

主流政党の議席数は3分の2に満たないため、政府借り入れを制限する憲法上の制約の解除を可決するには力不足だ。3月24日に新議会が開かれる前に採決を強行することで、この問題を回避できる可能性がある。

メルツ氏は、2000億ユーロの防衛費の特別予算を迅速に承認するための協議を開始

欧州連合(EU)加盟国はウクライナ戦争の早期決着に向けて動いているトランプ米大統領への対応に追われている。

トランプ氏は既にロシアのプーチン大統領と会談し、ウクライナの天然資源に関する合意に近づいている。トランプ氏はまた、欧州諸国にウクライナの将来の安全保障を保証する責任を負わせたい考えだと、同氏側近が述べた。

ドイツで議論されている案の一つは、新たな軍事支出とウクライナ支援のための特別基金を承認するというもの。その他の選択肢としては、既存の1000億ユーロの基金を拡大するか、いわゆる債務上限を調整して防衛支出を増やすことが考えられる。

いずれの選択肢も議員の3分の2の賛成が必要であり、次期議会が招集された後では確保がはるかに難しくなる。

原題:Bond Market Confronts Prospect of Quick Boost to German Spending、German Borrowing Angst Sends Gauge of Bond Appeal to Record Low、Germany Discussing €200 Billion for Emergency Defense Fund (3)(抜粋)

(第1-4段落と第8段落を追加します)

--取材協力:Greg Ritchie.

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