昨年夏場に高騰したコメの価格は、その後も高止まりの様相を呈する。2024年12月の米類の消費者物価は前年比+64.6%と、高い伸びが持続した。

コメ価格の高騰は需要超過が主因である。足元では、パンや麺類などの他の穀類と比べたコメの割高感が強まっているにもかかわらず、コメの需要は相対的に根強い状況にある。南海トラフ地震発生への備えや再び品薄になることへの警戒感などから、家計がコメの備蓄需要を高めていることが需要を押し上げている可能性がある。実際、家庭内のコメの在庫数量は、昨年夏場以降、例年を上回るペースで増加している。

旺盛な需要に供給が追いつかず、在庫の取り崩しが進んだ結果、民間事業者が保有するコメの在庫量は記録的な低水準となった。事業者による新米確保の動きが強まったことで、コメの相対取引価格(卸売価格)は大きく上昇した。

こうしたコメ需給のひっ迫を受けて、政府はコメの流通円滑化を目的に備蓄米の一時放出を決定。備蓄米の流通拡大により需要超過が解消に向かえば、コメ価格の抑制に寄与する公算が大きい。ただし、家計によるコメの備蓄需要が想定以上に根強い場合、コメ価格の高止まりが長期化する可能性も考えられる。この場合、支出に占めるコメの割合が高い低所得世帯を中心に消費の重石に。家計のコメの供給不安払拭に向けた働きかけも重要になるだろう。

(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 研究員 後藤俊平)