(ブルームバーグ):人気ユーチューバーがアクティブ運用型の上場投資信託(ETF)を閉鎖する。ベンチマーク(基準)を下回るパフォーマンスに加え、競争の激しいETF業界での事業運営コストが響いた。
オンライン上で「ミート・ケビン」という異名をとる金融インフルエンサーのケビン・パフラス氏は自身のチャンネルの動画で、同氏が運用する「ミート・ケビン・プライシング・パワーETF」(証券コード:PP)を運用開始から約2年たつ今月末に閉鎖すると発表した。資産総額は3200万ドル(約49億円)。
「YouTube(ユーチューブ)」だけで200万人余りのフォロワーがいるパフラス氏のETFは、50万ドルでスタートし、ピーク時には約5000万ドルの資金を運用していた。
同ETFはレバレッジ付き米国債ETFのほか、ロケット・カンパニーズやイェルプなど約12銘柄を保有している。ブルームバーグが集計したデータによると、2022年11月の開始以来、運用成績はS&P500種株価指数を約26ポイント下回っているが、マーケットを上回るパフォーマンスを上げていた時期もあった。

運用成績の悪さがファンドマネジャーへの資金流入を妨げることは、これまでにもあった。しかし、ETFを取り巻く環境はますます競争が激しくなり、特に大型株価指数に連動するパッシブ運用ではないファンドにとっては、その傾向が顕著だ。過去1年間に、ETFに流入した1兆2000億ドルの資金のうち、アクティブ運用のETFはわずか4分の1程度しか集めることができなかった。
事業運営費を賄うだけの資金を集めることさえ難しいETFもある。パフラス氏のETFは0.76%という比較的高い運用手数料を徴収していた。これは、米国のアクティブ運用型ETF業界の平均である0.69%を上回る。しかし、パフラス氏はユーチューブ動画で、推定100万ドルの損失を出したと明らかにした。
パフラス氏はブルームバーグ・ニュースからの追加のコメント要請を断った。
シティグループの分析によると、米国で上場している約3900本のETFのうち、3分の1から半分は年間運用コストをカバーできていない可能性が高い。この分析では、固定費を20万-35万ドル、変動費を最大7.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と想定している。
こうした厳しい状況にもかかわらず、オンライン上の有名人や著名な株式選定者は、独自のETFで腕試しをしようとする意欲を失っていない。
ファンドストラット・キャピタルの金融アナリスト、トム・リー氏は昨年11月に立ち上げたばかりの新しいETF「ファンドストラット・グラニー・ショッツ米国大型株ETF」に、すでに約9億ドルを集めている。S&P500種をわずかに上回るパフォーマンスを記録しているが、運用費は0.75%と、S&P500種のインデックスファンドが通常徴収する手数料を大幅に上回っている。
パフラス氏はETF閉鎖を発表した動画で、お金を稼ぎたいならファンド設立は勧めないと述べた。
業界ウォッチャーにとって、同氏の経験は、ソーシャルメディアでの人気を金融市場での成功に結びつけることの難しさを浮き彫りにしている。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアタナシオス・プサロファギス氏は「たとえ多くのフォロワーがいたとしても、資金を集めることがいかに難しいかを示している」と指摘。「結局のところ、重要なのはパフォーマンスで、パフォーマンスこそがすべてだ」と話した。
原題:YouTuber Is Closing His ETF After Soaring Costs (Correct)(抜粋)
(同ETFの運用歴を訂正します)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.