(ブルームバーグ):日本企業の2024年10-12月期決算は見た目ほど強くなく、狭いレンジで推移する日本株を再び上昇局面に押し上げるには力不足となりそうだ。
ブルームバーグがまとめたデータによると、TOPIX500指数構成銘柄の純利益は前年同期比13%増の15兆6000億円と過去最高を更新した。未上場企業への投資評価損益で決算が振れやすいソフトバンクグループを除くと増益率は24%に高まる。アナリスト予想を上回った企業の割合も約6割に達し、低調だった7-9月期から急回復した。
ただ、為替の円安効果や一時要因で利益がかさ上げされた面があり、市場では本業の収益改善はそれほど強くないとの見方が出ている。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは、「ボトムラインは強いものの、営業利益率は低下しており、本業の利益には力強さに欠ける点があった」と指摘する。

岡三証券の松本史雄チーフストラテジストによると、東証株価指数(TOPIX)構成企業の経常利益が前年同期比14%増えたのに対し、本業のもうけを示す営業利益は同3.3%増にとどまった。近年、双方の差がここまで広がったことはなかったと松本氏は話す。
理由の一つとして考えられるのが、為替差益によって経常利益がかさ上げされている点だ。松本氏は、営業利益と経常利益の乖離(かいり)は自動車を含む輸送用機器や精密機器などの業種で特に顕著だとし、「製造業だけで見れば、実態として営業利益は減益」だと分析した。
好例がトヨタ自動車だ。日本を代表する製造業企業である同社は純利益が2兆1900億円とアナリスト予想を1兆円も上回ったが、営業利益は予想から10%超下振れした。
同社の連結販売台数は、認証不正の影響もあり前年同期比4.2%減と4四半期連続で減少している。株価は5日の決算発表直後こそ上昇したものの、買いは続かず、その後はTOPIXを下回るパフォーマンスとなっている。
市場関係者の間で全体としては比較的良好な決算だったとの受け止めが多いのは事実だ。銀行や人工知能(AI)関連の一部銘柄、建設業など国内の設備投資に絡む業界で、好調な決算が目立った。
JPモルガン証の西原氏は、1株利益(EPS)が上方修正された銘柄や自社株買いを発表した銘柄が必ずしも決算後のパフォーマンスで上位になっていないとして、この先「決算内容が消化されていく中で、ファンダメンタルズが改善した銘柄がTOPIXをアウトパフォームしていく余地が残されている」との見方を示す。
関税をはじめ米国の経済政策に不透明感が強く、株式相場が決算に素直に反応する妨げになったとみる関係者も多い。トランプ大統領は4月2日ごろに自動車関税を導入すると述べており、少なくともそれまでは米国の通商政策に振り回される可能性が高い。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、決算は利益面でのポジティブサプライズが大きく、投資家に安心感を与えるものだったとした上で、足元ではどうしてもトランプ関税などに焦点が当たりがちだと話す。「それがどうなるか分からない状況でリスクマネーは入りにくい」と述べた。
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