(ブルームバーグ):人工知能(AI)を活用したロボットアドバイザー(ロボアド)による資産運用サービスを手掛けるFOLIOホールディングスの甲斐真一郎社長は、取扱残高の順調な増加で黒字化が視野に入りつつあるとし、新規株式公開(IPO)を検討していることを明らかにした。
甲斐社長はブルームバーグのインタビューで、「IPOに向けた非常に重要なポイントとして黒字化があると考えている」と述べ、どちらも「そう遠くない未来に訪れる」との見通しを示した。甲斐氏はゴールドマン・サックス証券などを経て2015年に同社の前身を創業した。
SBIグループ傘下の同社は、AIロボアド「ROBOPRO」が主力サービス。SBI岡三アセットマネジメントの投資信託「ROBOPROファンド」などへの投資助言や、地方銀行や証券会社を含む金融機関向けに運用基盤システムを提供する金融インフラ事業も収益の柱となっている。
運用資産と投資助言資産を併せた取扱残高は今月13日時点で2500億円に達し、昨年3月末時点の1357億円から8割強増えた。開示資料によると、中核子会社であるFOLIOの24年3月期の営業収益は9億6700万円、純損失は18億5600万円だった。
矢野経済研究所によると、国内ロボアド市場は24年度に預かり資産残高ベースで3兆円を超える規模となる見込み。「貯蓄から投資へ」の流れに伴う市場の拡大余地は大きく、昨年11月には三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がロボアド国内最大手のウェルスナビを完全子会社化すると発表した。
FOLIOの収益は運用残高に課金するストック型が中心だ。預かり資産の拡大ペースは規模拡大とともに鈍化するとみられるものの、来年度も80%程度の伸びが期待できると甲斐氏はみている。これまで広告宣伝費をそれほどかけずに業容を拡大できており、運用資産の規模が拡大すれば「営業収益の伸びがほぼそのまま営業利益になる」と説明した。

特徴
ROBOPROの運用成績は、運用を開始した20年1月からの5年間で約110%。新たな少額投資非課税制度(NISA)で人気を博す三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の約130%には及ばないものの、分散投資を通じて下値リスクを減らし、同期間の東証株価指数(TOPIX)をアウトパフォームした。
特徴は、顧客のリスク許容度に応じ資産配分を固定して運用する多くのロボアドと異なり、AIがはじき出した予想に基づき大胆にアロケーションを変更する点だ。米大統領選前の昨年11月時点では50%が米国株式、30%が金、18.4%が不動産だったが、今年に入って米国株を大幅に削減。今月はわずか3.5%とする一方、新興国株を41.5%まで引き上げている。

新興国株式は、米トランプ政権の関税政策が及ぼす悪影響への懸念から慎重な見方が多かったが、1月下旬以降、中国発のAIモデルDeepSeek(ディープシーク)に関するニュースなどを手掛かりに米国株をアウトパフォームし始めている。
甲斐氏は、同社のAIモデルが「株式を持ちたいという中で、割安度合いに応じて新興国を選好している」と解説。「アナリスト的な言い方をすれば、米国株と新興国株の割安感に一定程度かい離がある場合は新興国株を持つことが多い」と述べた。
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