17日の日本市場では中長期物を中心に債券が下落(金利は上昇)し、長期金利は約15年ぶりの高水準を更新した。日本銀行の利上げ継続観測が根強いことに加え、国内総生産(GDP)の伸びが予想を上回り、売り圧力が強まった。日米金利差の縮小が意識され、円は対ドルで上昇。株式は好決算銘柄中心に小幅に反発した。

最も売りが強まった新発5年国債利回りは1.05%と、2008年10月以来の高水準を大きく更新した。19日に予定される高田創日銀審議委員の講演がタカ派的になるとの警戒感が強く、利上げに対する感応度が高い中期金利は先週から約16年ぶりの高値更新が続いている。朝方発表されたGDPも日銀の利上げ観測を後押しした。

24年10-12月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除く実質が前期比年率2.8%増と市場予想(1.1%増)を大きく上回った。過半を占める個人消費は前期比0.1%増と、予想(同0.3%減)に反し3期連続のプラス。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、GDPが予想より強く、個人消費もしっかりしており、「日銀による今後の利上げ継続を否定するものではない」と指摘した。年明け以降、日銀からタカ派的な情報発信が続いており、「ターミナルレートが少なくとも1%と言われると、今の金利水準で良いのか不安にもなる」と語った。

債券

債券相場は下落。日銀の利上げ継続観測を背景に投資家の慎重な投資姿勢が続く中、GDPの伸びが予想を上回ったことで下げが加速した。一方、超長期債は底堅く推移し、利回り曲線がフラット(平たん)化した。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、金利スワップ市場では6月の日銀利上げ織り込みが5割を超えてきていると指摘。「利上げ期待が前倒しになってきており、中立金利の水準もこれまでより高くなるとの憶測で売られている」と述べ、投資家は手控えムードが強いと言う。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストも「ターミナルレートの見通しが切り上がっているため、中期債が弱く、フラットニングの見方が引き続き優勢」とみている。高田日銀審議委員の講演についても「ターミナルレートが具体的に示されることはないだろうが、発言トーンがタカ派的なだけで売り材料になり得る」と警戒感を示していた。

新発国債利回り(午後3時時点)

外国為替

東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=151円台半ばに上昇。GDPが市場予想を大きく上回り、円買いが強まった。前週末に米国の長期金利が低下し、日米金利差の縮小を受けたドル売りの流れも続いている。

りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、GDP統計が強く、国内金利の上昇が続いているほか、高田日銀審議委員の講演を控えていることで円買いが優勢だと指摘。ドル・円は7日に付けた151円割れの水準を再び試し、「150円台半ばまで下げる可能性がある」との見方を示した。

14日の米10年国債利回りは前日比5bp低い4.48%程度に低下した。1月の米小売売上高がここ2年近くで最大の落ち込みとなり、債券買いが強まった。

株式

東京株式相場は小幅反発。サンリオや第一生命ホールディングスなど市場予想を上回る決算を発表した銘柄が急伸し、投資家心理の改善に寄与した。ダイフクなど機械株、3000億円を上限とした自社株買いの実施を発表したブリヂストンなどゴム製品株も上げ、電機や銀行株も堅調。

SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は「決算はまちまちだが、ポジティブな企業が個別に大きく動いており、全体にも効いている」と指摘。一方で、トランプ米大統領の関税が世界経済にどのような影響を与えるのかまだよく分かっておらず、一部の投資家に買いをためらわせているとも語った。

トランプ米大統領が自動車に対する関税を4月に導入すると述べたことを受け、トヨタ自動車やホンダなど自動車株は下落。業績計画を下方修正したオリンパスなど精密機器株も安く、サービスや化学株も軟調。TOPIX採用の1695銘柄中、上昇は622、下落は1020。東証プライム市場の売買代金は4兆3941億円と前週末から1割以上減った。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:山中英典、アリス・フレンチ、佐野日出之.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.