(ブルームバーグ):白人男性だけで取締役会を構成する企業とは新規株式公開(IPO)のビジネスはしないと表明してきた大手米銀ゴールドマン・サックス・グループは、この方針を白紙に戻した。
これまではIPO業務を引き受ける欧米の法人顧客は、取締役会で少なくとも2人が多様性のある人材で、そのうち1人は女性でなくてはならないという方針をゴールドマンは掲げてきた。この方針が最初に打ち出された2020年当初は、少なくとも1人が多様性のある人材であることが基準とされていた。
「取締役会の多様性要件に関する法務的動向に鑑み、当社は取締役会の多様性に関する正式な方針を廃止した」とゴールドマンの広報担当社トニー・フラット氏は述べた。
こうした要件が打ち出された当時は、多くの米企業が多様性擁護の波に飲み込まれていた。例えば資産運用大手のブラックロックは、女性取締役がいない企業の取締役選出では反対票を投じた。

ゴールドマンはIPOビジネスにおける影響力を利用して、時代遅れと考える企業に変化を強制し、この推進のために顧客からの苦情さえも退けてきた。
しかし同社はすでに、多様性基準を満たしていないと考えられる企業にIPOで助言を与えている。最近ではセメント会社のタイタン・アメリカとエネルギー輸出業者のベンチュラ・グローバルの株式上場を助けた。
DEI(多様性、公平性、包摂性)を米企業経済から締め出そうとする保守派の活動は、米株式取引所のナスダックにも及んだ。米連邦高裁は昨年12月、ナスダックが設けていた上場企業の多様性規定を無効化した。訴訟を提起したのはエドワード・ブラム氏率いるグループ。同氏は大学入試でのアファーマティブアクション(積極的格差是正措置)を廃止に追い込んだアクティビストとして知られる。同氏のグループは直接ナスダックを攻撃するのではなく、当該規定を承認した証券取引委員会(SEC)に問題を提起。この規定によって「不当な差別」が横行するようになったと主張した。州司法長官も同じようなメッセージを発した。
ナスダックの規定を巡る高裁の判断が出た翌日、ゴールドマンは自社の方針に変わりはないと確認していた。
米連邦最高裁が2023年にアファーマティブアクションを違憲と判断したのをきっかけに、米企業ではDEI方針の見直しが始まった。アマゾン・ドット・コムからウォルマートに至る多の企業が、そうしたイニシアチブを一部撤回した。第2次トランプ政権は企業からDEIを根絶するキャンペーンを強化。その第1段階として連邦政府とビジネスがある契約業者を標的にしている。.
原題:Goldman Scraps Diversity Rule for IPOs in Latest DEI Retreat (3)(抜粋)
--取材協力:Sonali Basak、Jeff Green.
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