新年に入ってわずか数週間に香港やブラジル、ニューヨークに拠点を置くファミリーオフィスが、超富裕層向け投資会社として拡大する資金力を見せつけている。

中国アリババグループ共同創業者の蔡崇信会長の資産管理を担うブルー・プール・キャピタルは1月28日、欧州高級品業界が低迷する中、イタリアのゴールデン・グース・グループの株式12%を取得したことを明らかにした。ゴールデン・グースは宝石をちりばめた1500ドル(約23万円)のランニングシューズを製造する。

その3日後には、総額260億ドルの資産を持つブラジルのモレイラ・サレス一族のファミリーオフィスが、経営難の仏容器メーカー、ベラリアの買収を検討していると伝えられ、同社の株価は20%も急伸した。

1月初めには、元ブラックストーン幹部チン・チュー氏のファミリーオフィスが、オーストラリアの資産運用会社に対して約18億ドルの買収提案を行った。

ゴールデン・グースの高級スニーカー

こうした動きは、他の投資家が敬遠するようなリスクテークにファミリーオフィスが踏み込んでいる最新の兆候だ。

ファミリーオフィスは近年、企業買収や、プライベートエクイティー(PE、未公開株投資)の二次売却、不動産市場に参入し、上場企業に対するアクティビスト(物言う投資家)としての活動にも乗り出している。

ファミリーオフィスは通常、個人ないし少数の顧客グループにサービスを提供するため、他の機関投資家よりも機敏な対応が可能だ。

プライベートウェルス顧客に助言する香港の法律事務所カラス・ソーのマネジングパートナー、ジェイソン・カラス氏は「ファミリーオフィスは今や国際的な企業にとって重要なプライベート投資の資金源となっている」と指摘。「高級ブランドやその他のユニークな資産に対するファミリーオフィスの投資は、今後数年間で飛躍的に増加する公算が大きい」と述べた。

テクノロジーや金融、ヘルスケア業界で富が急拡大する中、ファミリーオフィスの数はここ20年間に世界的に急増している。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、米アルファベットの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏と伝説的投資家スタン・ドラッケンミラー氏、海運王の女性相続人マリア・アンジェリコシス氏を含め、世界の富豪上位500人のうち少なくとも2割が個人資産を管理する会社を設立している。こうした億万長者らの純資産は、合計で3兆7000億ドルを超える。

原題:Family Offices Ramp Up Risk-Taking From $1,500 Sneakers to Glass(抜粋)

--取材協力:Tommaso Ebhardt、Charlie Wells、Annie Massa、Tara Patel.

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