(ブルームバーグ):円の対ドル相場が4週連続の上昇となる可能性が高まっている。7日は昨年12月の家計消費支出が5カ月ぶりにプラス転換し、日本銀行が再び利上げに動くとの見方を改めて裏付けた。
円は今週に入り、米国のトランプ大統領が関税発動に動く中で安全資産としての魅力を発揮し上昇した。円買いは5日発表の昨年12月の名目賃金の伸び率が約30年ぶりの高水準となったことで勢いづき、6日に日銀の田村直樹審議委員が2025年度後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げるべきだと発言したことでさらに加速した。
7日には一時150円96銭と昨年12月10日以来の高値を付けた。その後は売り優勢に転じたものの、週間ベースの上昇率は2%を超え、昨年11月末以来の大きさを記録する勢いとなっている。
英バークレイズのG10為替取引共同責任者、ジェリー・ミニエ氏は「日本の当局者から国内政策金利に関するタカ派的な発言が増え、円買いのトレードが盛り上がっている」と話す。顧客の間で他通貨に対する円買いへの関心が高まっていることから、「ドルよりも円の要因が大きい」との見方を示した。
投資家がドル買いポジションを減らしていることも円高を後押ししている。米国の金利低下やトランプ米大統領による関税引き上げの一部延期を受け、ドルは最近の高値から下落している。
7日に石破茂首相とトランプ大統領が初めて会談する予定。市場ではトランプ氏が対日関税や円安に言及する可能性が警戒されており、ある程度の相場変動は見込まれている。日本時間7日夜には米国の雇用統計の発表もある。
堅調な経済データ
今週発表された日本の経済指標は驚くほど堅調で、日銀の利上げが市場参加者が予想するより早く、より大幅に行われるのではないかとの臆測を呼んでいる。昨年12月は賃金に加え、家計の消費支出が22年8月以来の大幅な伸びとなり、エコノミスト予想を5倍も上回った。
為替ストラテジストらの間には、円が対ドルで心理的節目の150円を超えたとしても、一段の上昇余地は限定的との見方もある。個人投資家による海外株投資や、日本のマイナスの実質金利が引き続き円の上値抑制要因として働くためだ。
バークレイズのストラテジスト、門田真一郎氏とラムスレン・シャラブデムベレル氏はリポートで、短期的に円がさらに上昇する可能性はあるとした上で、「日本からの資金流出が円を引き続き圧迫していることに加え、なお低金利な円はキャリートレードに利用されやすい」として、「大規模なリスク回避が発生しない限りドル・円が持続的かつ大幅に下落することはない」と予想した。
こうした中でもトレーダーらは日銀の追加利上げの織り込みを進めている。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)によると、7月までの利上げ予想確率は80%、9月まででは100%に達しており、円にとってポジティブな材料となっている。
市場の利上げ観測は、日銀メンバーで最もタカ派とされる田村委員の6日の発言に加え、黒田東彦前総裁によっても後押しされた。黒田氏は同日、日本経済は「完全に復活した」との認識を示し、日銀が現在進めている金融政策の正常化については「極めて当然のこと」だと述べた。
元日銀理事の早川英男氏(東京財団政策研究所主席研究員)は4日のインタビューで、早ければ来年中にも日銀が政策金利を1.5%程度に引き上げる可能性があるとの見方を示した。
--取材協力:David Finnerty.
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