人工知能(AI)の商業的可能性を巡り、映画製作会社はどんなアプローチを取るべきか確信が持てないでいる。

関係者によると、米オープンAIは数カ月にわたり、ウォルト・ディズニーやコムキャスト傘下ユニバーサル・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーなど大手映画会社と、動画生成AI「Sora(ソラ)」の創造的かつ商業的な可能性について話し合いを重ねてきた。オープンAIは映画会社が自社プロジェクトで使用できるようソラのカスタマイズ版作成について協議してきたという。

しかし、こうした話し合いはまだ契約には至っていない。映画会社側はAI企業との提携に消極的で、自社データの使われ方や、労働組合の怒りを買う可能性を懸念している。2023年にハリウッドをまひさせた2回の労働争議では、AI利用を巡る懸念が最大の要因の一つだった。脚本家や俳優らはいずれも、自らの作品が不正使用されないようハリウッドの映画会社にテクノロジー企業の監視を引き続き求めている。

サム・アルトマンCEO

対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を開発したオープンAIは24年初頭にSoraを発表した。 その後間もなく、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)を含む同社経営陣が、ハリウッドのイベントに出席するためにロサンゼルスを訪問。映画会社やメディア幹部、タレント事務所の関係者らと会い、同技術を実演した。

オープンAIは昨年12月に正式リリースした同製品について、商業的なパートナーシップの締結を急ぐのは時期尚早かもしれないことを認めている。

ブラッド・ライトキャップ最高執行責任者(COO)は1月にブルームバーグ・ニュースに対し、「ソラはまだ初期段階にある」と指摘。オープンAIは業界と関わりを持っており、「彼らのフィードバックは非常に貴重だ」と付け加えた。

俳優兼監督のベン・アフレック氏は昨年のテレビのインタビューでAIについて、「映画製作でより多くの労力が必要だが創造性は低めで、よりコストのかかる部分を中抜きするだろう」と述べた。だが、映画製作や脚本執筆の作業をAIが取って代わることはないとアフレック氏は警告した。

映画会社との話し合いは、より複雑だ。AIがすでに人々の働き方を変えつつあることを認識している映画会社は時代に取り残されることを望んでいない。多くの業界幹部は、AIがアニメーションや視覚効果のコスト削減につながるというアフレック氏の考えに同意している。

それでも、アルファベット傘下のグーグルやネットフリックスなどが視聴者や広告主を奪っているのを目の当たりにしてきた映画会社は、自社の最も貴重な資産を多額の見返りなしに他の大手テクノロジー企業に譲り渡すことには後ろ向きだ。スポティファイ・テクノロジーの株式取得を通じて大きな利益を獲得したレコード会社とは異なり、大手映画スタジオはユーチューブやネットフリックスのような新しい配信業者に投資したことはない。

原題:OpenAI’s Sora Filmmaking Tool Meets Resistance in Hollywood (1)(抜粋)

--取材協力:Rachel Metz.

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