首都ワシントンでは週末1日、人けのない米国際開発局(USAID)本部を訪れたイーロン・マスク氏の側近らが、オフィスへの入室許可を要求した。機密文書や扱いに注意が必要な情報を厳重に保管した部屋も、例外ではなかった。

世界一の富豪マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)は、ハイテクセクターの職歴がある20代の若い男性少なくとも4人のチームを派遣。彼らはUSAIDの職員らの間で「DOGEキッズ」と知られるようになった。

60歳を超えるベテラン職員らの情報を数日前から収集してきたDOGEキッズは、要求に対し「ノー」の回答は受け入れない強い姿勢だった。USAID高官に宛てた1日の動向をまとめたメッセージについて、関係者4人がブルームバーグに内容を説明した。

それによると、USAIDでは、厳重警備の室内立ち入りを阻もうとした警備員とDOGEキッズらが衝突。DOGE側は幾つもの階にわたり部屋から部屋と移動しながら、それぞれの机を調べた。

騒動の途中、DOGEの職員がマスク氏に電話をかけた。マスク氏は機密情報が保管されている部屋への入室を認めないなら、連邦保安局を介入させると警備員に伝えた。最終的にDOGEは少なくとも部分的には要求を聞き入れられ、アクセスを得た。

1週間にわたったDOGEとUSAIDの緊張は、ここでピークを迎え、100人を超えるUSAID職員が休職扱いとされた。1日の時点では監査官や立法、広報、警備関連の担当者もこれに含まれた。

USAIDは1961年、貧困と病気に苦しむ諸国を支援する目的で設立され、戦争や災害からの復興を支援するほか、中国やロシアの影響力をけん制することを目的としている。トランプ大統領は就任初日に、USAIDの主要ミッションを事実上凍結。今回の人事と本部での騒動で同局にはあらためて衝撃が走った。

1日の騒動は、機密および扱い注意の情報を保管する部屋「セキュア・コンパートメント・インフォメーション・ファシリティー(SCIF)」へのアクセスがその焦点だった。

事情に詳しい関係者によれば、彼らが求めていた人事関連の文書は機密文書ではなかったが、SCIFへの入室は情報安全面で最高レベルの許可が必要とされていた。DOGEのチームがそのレベルでの許可を得ていたかどうかは明白ではない。

DOGE諮問委員会メンバーに指名されているケイティ・ミラー氏はX(旧ツイッター)への2日の投稿で、「安全保障面で適切な許可を得ない限り、機密文書にアクセスすることは不可能だ」と指摘した。

リンクトインのアカウントを通じて同氏にコメントを求めたが、返信はない。1日にUSAID本部を訪れたDOGEチームのメンバーにも当局が付与したメールアドレスを通じてコメントを要請したが、返答はなかった。

DOGEチームは2日も夜遅くまでUSAID本部で作業し、性的少数者(LGBTQ)コミュニティーの支援や、DEI(多様性、公平性、包摂性)に触れたアート作品を壁から外すなど、オフィス内装に手を入れた。最終的にはすべてが撤去されたと、事情を直接知る関係者8人が明らかにした。

USAIDのウェブサイトはスリム化された上で国務省のウェブサイトに統合された。マスク氏はXへの投稿で「USAIDは犯罪組織だ。死ぬべきときが来た」とコメントした。

USAIDの職員は3日朝、本部がその日は閉鎖され、大半はリモートで勤務するよう指示するメールを受け取った。「さらなる指示は追って伝える」と書かれてあったという。

マスク氏は財務省の機密システムにアクセスできるもよう

原題:Behind DOGE’s Standoff at USAID: Desk Searches and Musk Calling (1)(抜粋)

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