世界最大級の家族経営宝飾チェーンを築いたインド人の富豪ジョイ・アルッカス氏は、地政学的・経済的リスクを理由に、金価格は今後数年も上昇基調をたどるとの見方を示した。

同氏は米軍によるイラン攻撃や、その報復として、ドバイの空港や同市を象徴する超高級ホテルを標的としたドローン(無人機)攻撃が起きたことを例に挙げた。

「世界に緊張が生じれば、人は安全を求めて自然と金に向かうものだ。それが数日間は金価格を押し上げる可能性がある」と、ジョイアルッカス・グループのオーナーは一連の攻撃が始まった際に訪れていたドバイで、ブルームバーグに述べた。「今後2、3年を見渡すと、特に米経済やより広範な地政学情勢を巡る実質的な改善がない限り、大きな調整は起きないとみている。下押し局面はあり得るが、全体的な方向性は依然として上向きだ」と話した。

こうした発言からは、金の大口保有者が最近の価格変動をどう見ているかがうかがわれる。金はこの1年で75%超上昇し、1月には過去最高を記録。3月5日には1.1%上昇し、1オンス当たり5200ドルに接近した後、下げに転じている。

アルッカス氏(69)は、アラブ首長国連邦(UAE)やインド、米国などに200店近くの店舗を構え、約1万6000キログラム(16トン)の金在庫を延べ棒や宝飾品の形で保有しているという。

金価格が上がれば、数十年かけて積み上げた在庫の価値も上昇する。大量の在庫のおかげで10-20%の変動にも耐性がある半面、在庫を補充する際には現在の高値で支払う必要がある。

「運転資金は増加し、補充のたびにコストは上昇する」と、アルッカス氏は述べた。ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、同氏の純資産は58億ドル(約9100億円)とされている。

もっとも、単一の地域的情勢だけで金が新たな水準に押し上げられることは通常ないと、同氏は最近の中東情勢に関連して指摘。金価格が大きく動き、それが定着するには、米金利やドル、インフレ、世界の投資家の信頼感といったより大きな要因が必要だと述べた。

ドバイへの攻撃は学校閉鎖や在宅勤務の拡大、裕福な外国人居住者コミュニティーの動揺といった別の問題も生み出した。

アルッカス氏によれば、投資用の延べ棒やコイン需要は以前から拡大している。10グラムや50グラムの銀バーを投資目的で購入する新たなトレンドが見られるという。

同氏の顧客は多くがインド人で、結婚式や祭り、誕生日、父の日向けの宝飾品購入は続いているが、最近の価格急騰で購買力は影響を受け、軽量商品の人気が高まっている。

米・イスラエルによるイラン攻撃が中東全体に拡大したことを受け、金価格は大きな変動を続けている。

「長期的な金の方向性は一つだと信じている。ヘッジ戦略は信用しない」とアルッカス氏は述べた。

原題:Billionaire With 16,000 Kilos of Gold Sees Lasting Bull Case (1)(抜粋)

--取材協力:Katharine Gemmell.

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