3日の日本市場は株式が大幅安。米国のトランプ大統領がカナダなどに4日から追加関税を課すことを決め、世界経済や企業業績への悪影響が警戒された。世界的なインフレ懸念の高まりからドルが全面高となり、円は対ドルで下落。債券はインフレに敏感な超長期債が売られた。

カナダとメキシコからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税を課すというトランプ大統領の決定を受けて、カナダは報復関税を課すと発表。メキシコも報復関税を含む対応計画開始を表明した。関税の応酬で世界経済が悪化するとの不安から、米S&P500種株価指数先物は一時2%余り下げた。

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは「市場はトランプ関税を織り込んでいなかったようだ」と指摘。トランプ氏が2018年に中国に関税を課した際、直接的な対象国でない日本の株式市場が大きな打撃を受けたことを挙げ、「日本株はグローバルな景気循環株であり、その影響を免れることはできない」と述べた。

債券は株式の大幅安を受けてリスク回避の買いが長期債に入る場面もあったが、勢いは続かなかった。為替市場は世界経済や米インフレ懸念からドルが全面高となる一方で、円はG10通貨のうちドル以外に対して上昇した。

株式

株式相場は大幅下落。自動車や電機など輸出関連中心にほぼ全面安となった。今回の関税で日本は直接の対象となっていないが、北米や中国を主要な市場とする多くの日本企業への影響が懸念された。

東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、トランプ大統領の関税引き上げは米国や対象国の国内総生産(GDP)を押し下げる上、インフレ圧力の高まりにもつながると述べた。日本企業もメキシコなどに自動車などの生産拠点があり、短期的に影響が出るとの懸念を示した。

東証業種別指数の下落率1位は輸送用機器で、精密機器や機械、電気機器の下げも大きかった。

為替

円相場は1ドル=155円台前半に下落。トランプ米政権の追加関税を受け、世界経済への影響や米国のインフレ加速への警戒感からドルが全面高となった。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時1%超上昇した。

りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、トランプ関税によるリスク回避のドル買いが安全資産としての円買いを上回っていると語った。ただ、関税の応酬になるとインフレ加速により世界経済全体にネガティブになり、クロス円では円買いが入りやすくなると指摘。「この調子で円安方向になることはないのではないか」と話した。

債券

債券相場は長期債が横ばい。超長期債は世界的なインフレ加速や需給悪化懸念から売られた。

日本銀行が3日に発表した1月の金融政策決定会合の主な意見では、物価の先行きに強気な声が多かった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、超長期債は日銀の定例国債買い入れで残存期間10年超25年以下の結果が弱く、「需給の緩みが示されたことが嫌気されたのではないか」と話していた。

新発国債利回り(午後3時時点)

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:山中英典、佐野日出之.

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