ソフトバンクグループの孫正義社長は3日、都内で開いたイベントで「ChatGPT(チャットGPT)」を開発した米オープンAIとソフトバンクが折半出資で合弁会社を設立することに合意したと発表した。

新会社を通じて、「Cristal(仮称、クリスタル)」と名付けた新しい人工知能(AI)サービスを日本企業向けに売り込む。孫氏は未来を見通すイメージのある水晶玉を手に持ちながら、クリスタルについて「企業向け、大企業向けの最先端のAIを世界で初めて日本から始める」取り組みだと意義を強調。また同サービスの開発と運用について年間4500億円を投じることも明らかにした。イベントにはオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)らも参加した。

ソフトバンクグループの孫社長

ソフトバンクGとオープンAIはすでに協業関係を築いている。米オラクルとともに、最大5000億ドル(約78兆円)規模に上る米国でのAIインフラ整備で、新会社「スターゲート・プロジェクト」を設立すると1月に発表していた。日本でも同様の取り組みが動き出せば、多くの業界に影響を与えることになりそうだ。

日本ではAI活用の遅れも指摘されてきた。昨年7月に総務省が発表した2024年版の情報通信白書によると、日本で生成AI(人工知能)を利用したことがある人は9%にとどまった。米国(46%)や中国(56%)と比べ利用が進んでいない。政府が国内でのAI開発を後押しし、楽天グループやNTT、NECなども同分野に参入しているが、圧倒的な勝者は現れていない。

孫氏はかねて、日本企業や社会がAI活用への意識が低い点を指摘し、「活用するのか、取り残されるのか。このままでは金魚になるぞ」と警鐘を鳴らしていた。

3日のイベントで、孫氏は新サービスの利用イメージについても説明。クリスタルが会議に参加して意見を言ったり、質問に答えたりするほか、コールセンター業務を代行するなどの事例を紹介した。過去の会議の記録や交渉の経緯など長期にわたる情報をAIが記憶し、回答に反映できる点も強みだという。孫氏らが目指す汎用人工知能(AGI)にとっても、この長期記憶は重要だとアルトマン氏は述べた。

巨額投資に懸念

一方で、ソフトバンクGの信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が急上昇している。スターゲート構想について、実現性と財務への影響に懸念が生じているためだ。

トレーダーへの取材によると、3日午前8時50分時点で、5年物CDSのミッドスプレッド(ビッドとオファーの中間値)は約235ベーシスポイント(bp)と、24年8月以来の高水準となっている。

孫氏とアルトマン氏は3日夕方、石破茂首相と面会し、企業向けAIサービスについて説明した。面会前の報道陣の取材に対して、石破氏は「日本におけるAIの普及は米国などと比べると足りない」と指摘。また近日中に米トランプ大統領と会談すると説明し、孫氏がトランプ大統領と会談し、絶大な信頼を得たとの認識も示した。孫氏は、石破氏からAI分野の成長やトランプ大統領の会談に関して相談を受けたと明かした。

ソフトバンクGが、オープンAIに150億-250億ドルの投資に向けて初期段階の協議を進めていることも明らかになっていた。

(石破首相の発言などを追加して更新します)

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