トランプ関税がいよいよ2月1日からメキシコ・カナダに発動される見通しだ。25%という高率の関税率である。中国への関税は、まだ実施の日時は未確定である。その影響は日本にどう及ぶのであろうか。

まず、メキシコ・カナダに進出する日本企業には対米輸出をするときに打撃が及ぶだろう。従来、USMCAの下で関税なしの貿易取引が行われていた。業種によっては、米国からメキシコに部品を輸入して、メキシコで加工組立をしてから米国に輸出するという企業もある。そうした先は、メキシコが報復関税を課すことで、部品調達コストが上がる。それを加工して米国に輸出するとそこでも25%の関税率でコストアップになる。二重の負担問題である。米国の消費者が購入するメキシコ製の製品価格が大きく上がることは、米国消費者の購買力を奪い、インフレ要因にもなる。

では、そうした打撃が及びそうな日本企業はどんな業種になりそうか。経済産業省「海外事業活動基本調査」(データは2022年度分)を使って、メキシコ・カナダの現地企業を調べると、その売上高はメキシコ5.2兆円、カナダ6.6兆円となっている(合計11.8兆円)。業種別の内訳では、輸送機械が6.6兆円(56%)と突出して多い。2番目は、卸売(商社)が3.1兆円(27%)である。ほぼこの2つで現地企業の売上は占められていると言ってよい。商社の売上は大半がカナダである。カナダは資源国であり、穀物輸出も多いので、そうしたものが主な取り扱い商品だと推察される。したがって、カナダで仕入れて米国に売る割合はそれほど高くはないだろうから、トランプ関税の悪影響は、輸送機械、つまり日本の自動車メーカーに集中する可能性が高いとみられる。

さて、メキシコ・カナダに進出した企業は、加工組立などの工程を米国の現地工場に移すのだろうか。多分、可能な範囲では行うだろうが、米国の方が人件費が高いので、割に合わないと断念する企業も多いだろう。トランプ関税のコストアップと、米国への生産移管を考えたときのコストアップを比較して意志決定をするのだろう。いずれにしても、日本企業にはメリットがない。現地工場における販売減少が収益悪化の要因になる。