自動車メーカーなど日本の景気敏感株に2方向から追い風が吹き始めた。国内経済が堅調に回復している上、米国のトランプ大統領による一連の景気刺激策にも期待感が高まっている。

トランプ氏の経済対策は、米国内に工場を有し、多くの顧客を持つ日本企業にとって朗報だ。自動車のほか、工場自動化(FA)や半導体関連を含む景気循環(シクリカル)銘柄が恩恵を受ける可能性が高い。

日本の景気敏感株で構成されるゴールドマン・サックス証券のバスケット指数は先週3.5%高と4週間ぶりに反発し、製薬会社や公益企業といったディフェンシブ株のバスケット指数の2.3%高を上回った。日経平均株価の構成銘柄ではファナックや安川電機などFA企業が1月の上昇率で上位10社にランクイン。両社とも米国売上高が前年比で増加している。

市場では日本銀行の利上げでさえも肯定的に捉えられている。利上げは一般的に借り入れコストの上昇を通じて個人消費の圧迫要因になるが、日銀が24日に昨年7月以来の追加利上げを決めた際、一部の投資家は日本経済が強いことの表れだと解釈した。日銀は経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、日本経済は「潜在成長率を上回る成長を続ける」との見通しを示している。

実際に経済データを見ると、消費者物価指数(CPI)は昨年12月に生鮮食品を除くコア指数が1年4カ月ぶりに3%台に到達。昨年11月の賃金と機械受注はアナリストの予測を上回った。

「日本は景気が良くなっているので、海外の金利引き上げとは状況が異なる」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは言う。省力化対策や半導体など、急成長している分野や需要が増えている業界に投資家の関心が高まる可能性があるとみる。

英ペラム・スミザーズ・アソシエイツによると、経済成長とインフレの加速、イールドカーブ(利回り曲線)のスティープ化という状況は、景気に連動した収益を上げている企業、特に比較的高い固定費を負担している企業にとっては好都合だ。同社のアナリストらはリポートで、銀行のほか、景気循環に業績が特に左右される企業、資本財メーカー、建設・不動産業界にとって成功の鍵になると指摘した。

中国の人工知能(AI)スタートアップ企業、DeepSeek(ディープシーク)の低コストモデル登場が半導体市場を揺るがし、日本の関連株が急落したことへの懸念が残るのは確かだ。トランプ米政権が検討する海外製品への関税賦課も輸出企業が多い景気循環株に逆風となる。トランプ氏は全ての輸入品に課す一律関税について、2.5%より「大幅に高く」設定したい考えを示している。

ただ、香港のレイリアント・グローバル・アドバイザーズでポートフォリオ・マネジメント部長を務めるフィリップ・ウール氏は、トランプ氏の通商政策は結局のところかなり現実的で、「関税は主に交渉の道具として使われる」と読む。「関税がそれほど悪影響を及ぼさないことが判明すれば、日本経済、とりわけ輸出に左右されやすい企業にとって良い傾向となる」との見方を示した。

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