(ブルームバーグ):30日の日本市場では円が上昇。米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過し、円の売り持ち高を解消する動きが出た。日本銀行の氷見野良三副総裁の講演でのタカ派的な発言も警戒され、債券は軟調に推移した。
円相場は一時1ドル=154円台前半と3営業日ぶりの高値を付けた。FOMCがタカ派的な金利据え置きになったことは想定内との受け止めで、持ち高調整のドル売り・円買いが優勢だった。午後3時過ぎに行われた日銀副総裁の講演は予想の範囲内の内容とされ、円は伸び悩む場面もあった。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、日銀副総裁の講演について「注目する見方もあったが、次の利上げは早くても2025年半ばとみられており、今の段階で予断する状況でもない」とし、為替相場の反応は限られたと述べた。
氷見野副総裁は都内での講演で、今後の金融政策運営について先行きの経済・物価・金融情勢次第とした上で、日銀の見通しが実現していけば政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくとの見解を改めて示した。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=155円台前半から一時154円台前半まで上昇。三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、FOMCを通過し「米インフレ高止まりを想定してドル・円の上昇をみていた向きが円のポジションを手じまったのではないか」と述べた。
FOMCについて、りそな銀行市場トレーディング室の田中春菜グループリーダーは、ややタカ派的な内容となることはある程度予想されていたとし、「ドルは本当は上に行きたいのだろうが、トランプ米大統領の発言を気にしている節があり、過度なドル買いが抑制されている感じ」と述べた。
債券
債券相場は下落。日銀副総裁の講演をにらんで売りが優勢だった。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、米国では金融政策の現状維持を決めたFOMC後も長期金利がさほど上昇しておらず、日本国債は特に材料のない中で売られていると指摘。日銀が「ビハインド・ザ・カーブ(金融引き締めの遅れ)に陥るリスクが警戒されているのかもしれない」と話した。
新発国債利回り(午後3時時点)
株式
東京株式相場は小幅高。米国の主要ハイテク企業の決算を受けて米株式先物が上昇したため、主要株価指数は序盤の下げから持ち直した。
米テスラとメタ・プラットフォームズの決算発表での強気の姿勢を受けて、一部の半導体関連株が上昇。市場の関心は中国DeepSeek(ディープシーク)の低コストモデルの登場により巨額AI(人工知能)投資が正当化されるのかという点に集まっている。
松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、米企業決算では「設備投資計画の削減に対する言及があるのか注目されていたが、今のところそれがなく、その点ではネガティブではなかった」と述べた。もっとも、「市場のムードはポジティブでもなく、ディープシークによってAI投資が変わるという警戒感が強い」と言う。
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--取材協力:山中英典、日高正裕、佐野日出之.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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