高級宝飾品の米老舗、ティファニーでは経営陣がスタッフの士気を高めようと「ティファニーの喜び」という社内アプリを導入し、婚約したカップルの写真や、大型セールスといった内容の投稿を促した。この社内アプリが従業員の重荷になるまで時間はかからなかった。

経営陣は米国のスタッフにもっと投稿するよう圧力をかけ、直ちに「いいね!」の反応を表示するよう求めた。2024年早々、このアプリは「強制された喜び」というニックネームで一部のスタッフに呼ばれるようになった。

ティファニーが世界収入の半分近くを稼ぐ米国では、店舗の売上高は目標を達成できず、同業他社への従業員転職が後を絶たない。この状況で経営陣が社内アプリに重点を置いていることに、スタッフは当惑している。同社の幹部や元幹部、管理職スタッフやアプリの事情に詳しい関係者が、公的に話す権限がないとして匿名で明らかにした。

ティファニーは21年に高級ファッション総合大手LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが160億ドル(現在のレートで約2兆4900億円)で買収。米国のティファニー事業を率いるクリストファー・キラニオティス氏とアンソニー・ルドリュ最高経営責任者(CEO)が送り込まれた。

しかしティファニーの業績はこれまでのところ、同じくLVMH傘下のルイヴィトンやディオール、ブルガリに比べて見劣りしている。28日に四半期決算を発表するLVMHは、売上高の内訳としてティファニーの数字を公表しないが、前四半期決算では時計・宝飾品の売上高が4%減少し、3四半期連続のマイナスとなった。

ルドリュ、キラニオティス両氏は米事業のビジョンを決定し、戦略を実行する責任者だ。ティファニーは従業員の報酬と販売目標を関連付けたが、その目標が達成されることはまれだった。一部に対してはボーナス支給の約束をほごにし、店舗責任者らには富裕層顧客を呼び込む努力が足りていないと指摘したと、関係者16人が述べた。

ニューヨーク市旗艦店リオープンの式典でテープカットするティファニーの幹部

ティファニーの広報担当者は、同社の業績や企業文化におけるキラニオティス氏の役割についてコメントを控えた。同氏やルドリュ氏のコメント要請にも応じなかった。

ニューヨーク旗艦店のウインドーを飾るティファニーの宝飾品

原題:Tiffany Workers Mock Forced ‘Joy’ That Exacerbated Staff Exodus (1)(抜粋)

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