日産自動車が検討を進めていたリストラ策の骨子が明らかになった。事情に詳しい関係者2人によると、工場閉鎖は伴わず、生産能力の削減は生産ラインの統廃合などで対応する。同社と共同持ち株会社の設立を予定するホンダは日産の再建を合意の条件に挙げており、交渉の方向に影響する可能性もある。

公表前の情報だとして匿名を条件に話した関係者によると、日産が11月に公表した生産能力2割、9000人削減などを柱とするリストラ計画のとりまとめは順調で、近く公表できる見通し。海外も含めて工場閉鎖はせず、生産ラインの統廃合やシフト変更などで能力を減らす方針だ。

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日産は11月の決算会見でもこうした方向性を示唆していたが、内田誠社長はその後のアナリスト向け説明会で、撤退する地域の有無や工場の閉鎖など「すべての可能性を現在検討中」だとも述べていた。

一方、ホンダは、同社の主導で設立を検討する日産との共同持ち株会社を巡る方向性について今月末をめどに一定の方針を打ち出す見通し。ホンダの三部敏宏社長は12月の会見で、日産の再建策の実行が計画実現の「絶対的な条件」だとし、両社が「自立した2社として成り立たなければこの経営統合の検討は成就することはない」と話していた。

日産広報担当の永井志朗氏は、日産は現在の業績を踏まえて「事業構造を今後のいかなるビジネス環境の変化にも柔軟・機敏に対応できるスリムで強靭(きょうじん)なものへと改革し2026年度までに年間350万台の販売でも持続可能な収益性とキャッシュを確保できる体制にすることで将来に向けて健全な成長を目指す」とコメントした上で、詳細については、別途公表するとした。

グループの完成車メーカー日産車体は21日、湘南工場(神奈川県平塚市)で商用車「AD」の生産を11月に終了することを決めたと明らかにしている。同工場の生産体制を縮小し、数百人規模の人員を削減する見通しとの事前報道もあったが、日産車体の広報担当者はADの生産終了以上の内容については同社が発表したものではなく、事実ではないとした。

日産は現時点でリストラの詳細について発表していないが、一部報道機関が部門や地域ごとの削減人数などを報じていた。

ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、工場を閉鎖しても簡単に売却できるわけではなく、当面できる取り組みとしてラインの統廃合などを行うのは「次善の策」になると話した。その上で、同氏は日産のリストラ策ではホンダは満足せず、継続して検討するよう求める可能性があると述べた。

(日産広報担当の永井氏の名前を訂正します)

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