(ブルームバーグ):フジ・メディア・ホールディングス株は24日に反発し、前日比5.1%高で取引を終えた。一時7.3%高を付ける場面もあった。一方、社債市場では業績悪化への懸念から企業の信用力を示すスプレッド(上乗せ金利)が急拡大した。
フジHD株は不安定な値動きが続く。前日はタレントの中居正広氏の芸能活動引退の発表が一部で報じられると下げ幅を拡大し、終値は7.8%安だった。調査委員会の設置を発表した17日以来、22日にかけて同社株は4日続伸していた。
同社は前日、日本弁護士連合会が策定したガイドラインに準拠する第三者委員会の設置を決めたと発表した。第三者委は、週刊文春が報じた中居氏と女性との性的トラブルへの両社の関わりや、類似の事例の有無、事後対応などについて調査する。3月末めどに報告書を提出する予定。
昨年12月下旬に中居氏のトラブルが報じられ、同氏は9日に声明を出して女性との間にトラブルのあった事実を認めた。フジテレビは同社社員が関わったとの報道に対して、一切関与していないとコメントを発表している。
フジHDは17日にも、調査委員会を立ち上げると表明していたが、指針に準拠しているか不透明だったことなどから批判が相次いだ。トヨタ自動車や日本マクドナルドHDなどがCM放映を見合わせるなど混乱は拡大し、ようやく第三者委による調査が決まった。
業績懸念
一方、相次ぐ広告差し止めから業績懸念が浮上し、2028年12月に満期を迎えるフジHD債のスプレッドは23日に、100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を超えた。ブルームバーグのデータによると、22日は約50bp、21日は約37bpだった。社債スプレッドは一般的に企業の信用力に応じて変動し、信用力が低下すると拡大する。
格付投資情報センター(R&I)は24日、フジHDの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更し、広告主の出稿見合わせがどこまで拡大し、期間が長引くか不透明だと指摘した。
共同通信は、フジテレビのCM差し替えで生じた損失について、ライオンが同局に補償を求めていく方針を明らかにしたと報じた。ブルームバーグはライオンに電話取材を試みたがコメントは得られていない。
共同通信によると、補償を求める動きが企業に拡大しているとみられ、フジテレビの経営に大きな打撃になりそうだという。

ガバナンスに「NO」
フジテレビは27日の午後4時に本社で改めて記者会見を開いて説明する。フジHDの嘉納修治会長、金光修社長、フジテレビの遠藤龍之介副会長、港浩一社長らが出席する。前回と異なりオープンな形で行う。
金光氏は23日、記者団の取材に応じ、社外取締役から経営陣の責任を問う声もあったと説明。経営責任について考えないといけないが、現時点では答えられないとした。また、株主から取締役会開催の要請はあったとしつつ、「外から言われたからやったというつもりはない」と話した。
遠藤氏は23日、記者団の質問に答え、「一番問われているのは、ガバナンスの問題だ」と説明。相次ぐCM放映見合わせは、ガバナンスに「NOを突きつけられている」ことだとの見解を示した。
米ダルトン・インベストメンツ系のライジング・サン・マネジメント(RSM)はフジHDに2度にわたって書簡を送付しており、第三者委員会の設置を要請。調査と改善策の提示を求めていたほか、2度目の書簡では第三者委員会を外部専門家のみで構成するよう再度要求していた。
(記者会見や補償を求める企業の情報を追加しました)
--取材協力:岩井春翔.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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