21日の日本市場では円が対ドルで一時154円台後半へ上昇して1カ月ぶりの高値を更新。米国大統領に就任したトランプ氏の関税政策を巡り荒い値動きとなる中、日本銀行が今週開く金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るとの観測が円を支えた。

債券は米長期金利がアジア時間帯に下げていることを背景に上昇。この日行われた40年国債入札が強めの結果だったことも相場の支援材料となった。株式は続伸。

トランプ米大統領は20日、メキシコとカナダからの輸入品に最大25%の関税を2月1日までに賦課することを計画していると述べた。両国が不法移民と薬物の米国流入阻止に十分な対策を講じていないとする以前からの主張に基づく動き。全ての国・地域からの輸入品への一律関税を検討する可能性にも言及した。

朝方は、トランプ氏が就任演説で対中国などへの関税や貿易規制に関する具体的発言がなく、過度な警戒感の後退で円、債券、株式がそろって高く始まったが、メキシコとカナダに関する発言をきっかけに円と株式を中心に値動きは不安定化した。

野村ホールディングスアジア太平洋株式ストラテジスト、チェタン・セス氏は「投資家は報道、市場の雑音、ソーシャルメディアの投稿で引き起こされるボラティリティーの高まりや逆張りの取引に備える必要がある」と指摘。相場が安定するのは米国の「関税の脅威が去った後になる可能性が高いが、そこにはまだ到達していない」と述べた。

外国為替

東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=154円台後半に上昇。トランプ米大統領の関税発言を受けドルが買われた後、再び円買いが優勢になった。円は主要10通貨で唯一対ドルで上昇した。

オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは「関税の話が出てドルが買われたが、頭打ちになったのでドルに売りが出た」と分析。ただ、日銀が今週追加利上げに踏み切ることはほぼ織り込まれており、国内要因でさらに円高が進む材料はないとの認識を示した。

関税発動で米連邦公開市場委員会(FOMC)がタカ派化する可能性が高いことを考えると、ドルの持ち高調整が終われば、再びドル買いの勢いが増すとも町田氏はみている。金融市場(OIS)が織り込む今週の日銀の利上げ確率は9割を超えている。

債券

債券相場は上昇。トランプ米大統領の就任式を混乱なく通過し、米金利が時間外取引で低下した流れを受けて買いが優勢となった。トランプ氏が関税政策について発言したことで上げ幅を縮小する場面も見られたが、40年国債入札の順調な結果を受けて相場は底堅かった。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、40年国債入札は元々懸念が乏しかった中で予想より強めの結果だったと分析。利回り水準の高さに加え、トランプ大統領の就任式を波乱なく通過したことで「1月の日銀利上げが確定的になり、不透明感が晴れて買いやすくなった」と言う。

40年債の入札結果によると、最高落札利回りは2.57%と、市場予想(2.6%)を下回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は2.752倍と、前回11月入札の2.236倍から上昇した。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

東京株式相場は続伸。トランプ米大統領の関税発動に対する懸念が再燃し、主要株価指数は一時下落に転じる場面もあったが、現時点ではメキシコとカナダ以外に広がりは見せておらず、売り圧力も限られた。

東証33業種はその他製品やゴム製品、精密機器、陸運、化学、機械など23業種が上昇。下落は石油・石炭製品や鉱業、保険、銀行、卸売りなど10業種。売買代金上位ではディスコやレーザーテックなど半導体関連の一角、任天堂、アシックスが高い。トヨタ自動車も小幅高。半面、IHIや川崎重工業、INPEXは安い。

野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは、関税の影響を受ける銘柄を保有することは投資家にとって難しいと指摘。ただ、ヘッジファンドがすでにグローバル株式と日本株双方に対するエクスポージャーを減らしており、株価の急落は想定していないと述べた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:長谷川敏郎、横山桃花、Chiranjivi Chakraborty.

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