米連邦捜査局(FBI)の幹部らは、米通信大手AT&Tのシステムに昨年侵入したハッカーが捜査官の通話記録やテキストメッセージを数カ月分盗んだとみていると警告している。FBI内では機密情報提供者の身元情報保護に向けた対応が急務となっている。ブルームバーグ・ニュースが確認した文書で明らかになった。

文書のほか、機密情報だとして匿名を条件に話した現職・元職の法執行機関当局者へのインタビューによると、FBI当局者は全米各地の捜査官に対し、AT&Tのネットワーク上の利用状況に関する詳細情報が、盗まれた数十億件の記録の中に含まれていると考えられると伝えた。文書によれば、FBIが利用している公安機関向けのAT&Tのサービスで使用されている全てのFBIの端末からデータが盗まれたと想定されている。

ハッキングされたAT&Tの記録のキャッシュは通信内容を明らかにするものではなかったが、捜査官と秘密の情報源を結びつける可能性があるという。文書によると、データには捜査官の携帯電話番号と電話やテキストメッセージで使用された番号が含まれているとみられている。暗号化されたメッセージングアプリなど、AT&Tのネットワーク上にない通話やテキストの記録は、盗まれたデータには含まれていなかった。

AT&Tは昨年7月に顧客データへの大規模なサイバー攻撃があったことを公表。2022年5月から6カ月分の携帯電話利用者のデータが標的となったことを明らかにした。ハッカーらは、AT&Tが身代金を支払わない限りデータを売却すると脅した。

このハッキングについて知る関係者1人が盗まれた情報のサンプルを調べたところ、FBIの機密通信の記録が含まれており、それには少なくとも捜査官1人の通話記録が含まれていることが確認された。同関係者は非公開情報だとして匿名で話した。

FBIがハッキングによる秘密の情報源漏えいを懸念していることは、これまで報道されておらず、電話会社から盗まれたデータが犯罪捜査や国家安全保障上の混乱につながる可能性を浮き彫りにしている。元捜査官らは、FBI自体のセキュリティー対策やどのように情報源を保護しているかについても疑問が生じていると指摘している。

FBIなど情報機関の元当局者らは、盗まれた電話記録が理論的には外国の諜報(ちょうほう)機関によって情報源ネットワークの解明に利用される可能性があり、犯罪捜査や国家安全保障に関する活動、関係者の人命を危険にさらす恐れがあると指摘している。

元FBI捜査官で米国家防諜(ぼうちょう)安全保障センター(NCSC)長官を務めたウィリアム・エバニナ氏は、「このような通信の流出は、捜査に重大な悪影響を及ぼすだけでなく、秘密情報提供者の身元が明らかにされた場合、提供者にも危険をもたらす可能性がある」とし、「良くない」ことだと述べた。

文書によると、FBIの幹部らは6月、警告の一環として、内部のセキュリティーチームが、特定の捜査官が使用するAT&T電話との通信が漏えいする可能性のある多数の機密情報源を見つけたと指摘。FBIは、ハッカーが情報を公開する可能性があることを踏まえ、影響を最小限に抑えるため即座に対応するよう求めたほか、一部の捜査官に対しては、承認された秘密の手段のみを使って情報提供者と連絡を取るよう注意を促したという。

原題:FBI Warned Agents It Believes Phone Logs Hacked Last Year (1)(抜粋)

--取材協力:Katrina Manson、Kelcee Griffis.

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