(ブルームバーグ):昨年12月の米消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコア指数の伸びが予想を下回った。前月に比べてもインフレが鈍化したことで、債券市場での大幅な売りは食い止められ、連邦公開市場委員会(FOMC)は従来考えられていたよりも早く金利を引き下げるのではないかとの期待が再び高まった。
前月比でのコア指数は6カ月ぶりに鈍化した。11月までは4カ月続けて0.3%上昇となっていた。宿泊費の低下や医療サービス費の伸び鈍化、家賃の比較的低い伸びが、CPIを抑制する要因となった。
CPIの落ち着きは、インフレ状況が安定しているとの見方を再び強めるのに寄与した。しかし、金融当局がそれを確信するには、落ち着いた数値がさらに必要だ。価格上昇圧力が長引いたことで、世界的な債券売りが見られ、昨年末にかけたFOMCの緩和ペースが速過ぎたのではないかとの懸念が強まっていた。
先週の好調な雇用統計と相まって、今月末のFOMC会合では金利据え置きが広く予想されているが、今回のCPIを受けて3月利下げの可能性が出てきたとみるエコノミストが増えた。CPI発表前は、短期金融市場ではおおむね年後半まで利下げはないとみられていた。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、シーマ・シャー氏は「FOMCとしては、1月に利下げに動くには十分でないことは確かだ」としつつ、「来月発表されるCPIも落ち着いた内容となり、さらに雇用の伸びが鈍化すれば、3月の利下げが再び選択肢として浮上する可能性もある」と指摘した。
CPI統計発表後に米国債市場では利回りが低下。S&P500種株価指数は上昇し、ドルは下落した。
短期金融市場では、再び7月米利下げの可能性が完全に織り込まれた。2025年通年の予想利下げ幅は約38ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に拡大。年内に2回目の25bp利下げが行われる確率を約50%織り込んだ。
エコノミストは基調的なインフレトレンドの指標として、総合CPIよりもコア指数の方が好ましいと見なしている。総合指数は伸びの40%余りをエネルギーが占めた。
CPIの伸びは食品価格や航空運賃、新車および中古車、自動車保険、医療費が主導した。食品とエネルギーを除く財の価格は0.1%上昇に鈍化した。11月は0.3%上昇だった。さらに中古車を除くと同価格は下落した。
住居費
サービス分野で最大の項目である住居費は2カ月連続で0.3%上昇した。持ち家のある人がその家を賃貸する場合の想定家賃である帰属家賃(OER)と家賃は共に伸びがわずかに加速した。前月は2021年以来の低い伸びにとどまっていた。
ブルームバーグの算出によると、住宅とエネルギーを除いたサービス価格指数は0.2%上昇し、7月以来の小幅な伸びにとどまった。米連邦準備制度理事会(FRB)は全体的なインフレの道筋を見極める上で、こうした指標を確認する重要性を強調しているが、当局は別の指標に基づいてこれを算出している。
その別の指標である個人消費支出(PCE)価格指数は、CPIほど住居費のウエートが高くない。PCE価格指数の伸びが当局目標の2%に近づきつつあるのは、それが一因だ。14日に発表された生産者物価指数(PPI)統計では、PCE価格指数に反映されるいくつかの項目がおおむね落ち着いた動きを見せた。しかし、航空運賃は高い伸びを示した。
PCEコア価格指数
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン、スチュアート・ポール両氏は「12月のコアCPIの予想外の低さは、ディスインフレがなお進行中だとの見方を裏付けるものだ。PPIと併せて見ると、FRBが好むインフレ指標であるPCEコア価格指数は、2%の物価目標と整合的なペースとなるだろう」と指摘した。
CPIを受け、31日に発表される12月のPCEコア価格指数について、幾人かのエコノミストが前月比0.2%上昇を予想した。
パンテオン・マクロエコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、サミュエル・トゥームズ氏はリポートで、「PCEコア価格指数が今後2カ月間に若干低下し、3月19日のFOMC会合で金融緩和が講じられる論拠が強まると引き続き考えている」と指摘した。
金融当局は賃金上昇率にも注目している。経済の主な原動力である個人消費の見通しを占う上で材料になるためだ。15日に発表された別の統計では、インフレ調整後の実質平均時給は前年比1%増と、7月以来の低い伸びにとどまった。
今後2週間に小売売上高やインフレ期待、住宅市場に関するデータが発表される予定。FOMC定例会合は28-29日に開催される。
金融当局者による最近の講演や予測では、依然としてインフレの上振れリスクを警戒し、金利調整には慎重な姿勢で臨むことが示唆されている。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Core CPI Finally Eases, Rallying Bets for Fed to Cut Sooner(抜粋)
(統計の詳細やエコノミストの見方を加え、更新します)
--取材協力:Chris Middleton、Mark Niquette、Nazmul Ahasan、Maria Clara Cobo.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.