(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は15日、来週の金融政策決定会合で米新政権の政策や春闘の賃金動向などを精査し、追加利上げを行うかどうか判断すると明言した。市場では同会合での利上げ観測が一段と強まり、円高が進行している。
植田総裁は全国地方銀行協会の新年の集いであいさつし、今年も経済・物価情勢の改善が続くなら、政策金利を引き上げて金融緩和度合いを調整すると改めて表明した。利上げの判断では米国の経済政策、春闘に向けたモメンタムが重要なポイントだと指摘。賃上げについては、各界の意見や9日の日銀支店長会議での報告では前向きな話が多かったとの認識を示した。

氷見野良三副総裁は14日の講演で、2025年度の賃上げも24年度に続く強い結果となることへの期待を表明。米政策は20日の大統領就任演説で大きな方向性が示されるとし、23、24日の会合で利上げの是非を議論し判断すると述べていた。植田総裁も同会合で利上げを議論する方針を明確に示したことで市場で利上げの織り込みが進む中、トランプ氏の就任演説とそれを受けた市場動向が大きな焦点となる。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、植田総裁と氷見野副総裁の発言内容は大体同じだが、「総裁なので発言の重みが違う」と指摘。総裁発言は日銀のボードメンバー全体の意見だとみられるとし、「1月利上げの可能性が一段と高まった」との見方を示した。
外国為替市場の円相場は、植田総裁発言を受けて円買いが優勢となり、1ドル=156円台後半に上昇している。発言前は157円90銭付近で推移していた。債券市場では新発10年債利回りが一時1.5ベーシスポイント(bp)高い1.255%と、11年4月以来の高水準を付けた。
加藤勝信財務相は15日、日本記者クラブでの記者会見で、1月会合に関し、「具体的な金融政策は日銀において判断していただく」とした上で、「どういうことを議論されるのか、われわれとしてもしっかり注視していきたい」と語った。政府と日銀は緊密に連携しており、デフレ脱却に向けて適切な政策運営を期待するとも述べた。
1月予想は7割台
金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS) 市場で、追加利上げ時期の予想は総裁発言後に1月会合が7割台に上昇し、3月会合は1割台に低下している。発言前は1月会合は6割強、2割程度だった。
日銀が9日に開いた支店長会議では、追加利上げの重要な判断材料となる25年度の賃金設定について、構造的な人手不足の下で、継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業に浸透してきているとの報告が多く示された。
前回の昨年12月会合では、0.25%程度の政策金利の維持を8対1の賛成多数で決定。田村直樹審議委員は0.5%程度への利上げを提案したが、反対多数で否決された。植田総裁は同会合後の記者会見で、利上げの判断に至るには「もうワンノッチ(1段階)ほしい」と説明。その見極めに春闘に向けた賃上げの動向を要素の一つとして挙げていた。
(市場動向を差し替えて更新しました)
--取材協力:山中英典、梅川崇.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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