(ブルームバーグ):年末年始の暴飲暴食を悔やんで、1カ月の禁酒を自身に課す人は多い。
飲酒をする米国人の49%は昨年、年明けの1カ月間はアルコールを断つ可能性が「非常に高い」または「やや高い」と答え、その割合は前年から7ポイント上昇した。
この数字を見れば、ハイネケンやギネスのような世界的なブランドのみならず、デシューツやシエラネバダといった米国の独立系ビールメーカーも、低アルコール製品やノンアルコールビールに投資しているのは不思議ではない。
醸造技術の進歩により、本物のビールの味や香り、感覚に近いノンアルコールビールが誕生している。とはいえ、アルコール度数4.5-6%のフルストレングスビールと全く同じにはならない。
しかし、ノンアルコールビールをビールの代わりとして考えなければどうだろう。
ノンアルコールビールの販売は急増している。米国の小規模なビール醸造所の業界団体であるブルワーズ・アソシエーションによると、2024年10月時点で、米国のクラフトビールメーカーにおけるノンアルコールビールの売り上げは前年比30%増だった。
ビールの国際的な業界団体であるワールド・ブルーイング・アライアンス(WBA)は、主にZ世代の飲酒習慣の変化により、世界のノンアルコールビール売上高が500億ドル(約7兆9000億円)と、20年の2倍以上に達すると予測している。
興味深いのは、ノンアルコールビールの顧客層は禁酒主義者や健康オタクではなく、本物のビールをよく飲む人々であることだ。ビールメーカーに話を聞くと分かる。
米オレゴン州ベンドのデシューツ・ブルワリーで最近行われたノンアルコールビール新シリーズのバーチャル試飲会で、醸造イノベーションマネジャーのベン・ケース氏はノンアルコールビールを購入する人の9割超が普通のビールも定期的に飲んでいると報告した。
同醸造所は、消費者がノンアルコールビールを本物のビールの代替としてではなく、ビールを補い、飲むことを楽しむ時間を長引かせ、ほろ酔いになるわけにはいかない夜を埋めるために飲んでいることを突き止めた。
「私はビールが大好きだが、ビールを飲みたくなった時にそれがアルコールを飲むのがふさわしくない場であることがよくある」と、デシューツのピーター・スクレベック最高経営責任者(CEO)は同イベントで説明。
同社のビール「ブラックビュートポーターを1杯、それからノンアルコールビールを2杯飲めば、社交的な雰囲気を保ちつつ、責任ある飲み方をすることができる。リラックスしたひとときの雰囲気そのままに歓談を続けることができる」と話した。
15年にわたるノンアルコールビール愛好家でコンサルタントでもあるアーロン・ゴア氏によれば、全米でノンアルコールビールを飲む人の約82%がアルコールの入った普通のビールも飲む。
「大人っぽい、ビールの味がするもので社交の時間を延ばすことができる。ソーダでもいいが夜の集まりに参加している感じがしない。ノンアルコールビールは、脳の化学反応を満足させられなくても、味覚と社会的欲求を満たしてくれる」という。
優れたノンアルコールビールを紹介しよう。
セリア・ブルーイングのグレインウェーブ
【「ブルームーン」に似たノンアルコールビール】
元クアーズの醸造責任者であるキース・ビラ氏は、バレンシアオレンジの皮とコリアンダーを使った少し甘いベルギースタイルの白ビール「ブルームーン」を初めて開発し、ビール界を変えた。
同氏は現在、独立してノンアルコールビール醸造会社セリアを設立し、ブラッドオレンジピールとコリアンダー入りで、同じく革命的で口当たりのよいベルギースタイルのアルコールゼロ飲料を主力商品としている。
モメンタム・ブルワリーのヘイジーIPAノンアルコール
【 「ニューベルジャンブードゥーレンジャーIPA」に似たノンアルコールビール】
IPA(インディア・ペール・エール)は長い間クラフトビールのトップセラーだったが、ノンアルコールIPAはつかみどころのない目標だった。それが変わったのは、ホップの抽出方法と、ろ過技術の向上により、完全に醸造されたアルコールIPAから風味を残したままアルコールを除去することが可能になったからだ。
ニューヨーク市ブルックリンにあるモメンタム・ブルワリーは、まるでクラシックビールのように爽やかでフルーティーな味わいのノンアルコールビールを生み出した。
サントリーのオールフリー
【「サッポロ」ビールに似たノンアルコールビールテイスト飲料】
この超ライトボディーで発泡性がありわずかに麦芽の味がするノンアルコールビールテイスト飲料の「オールフリー」は、ドライな後味のライスラガーのように飲める。
ギネス0
【「ギネス」に似たノンアルコールビール】
ノンアルコールビールの品質が向上したとはいえ、目隠ししてテイスティングすると、ほとんどの人がノンアルコールビールと本物のビールを見分けることができる。ただし、アイルランドを代表する「ギネス」のノンアルコールは別かもしれない。ギネス0は泡立ちや香り、飲み心地味わいのどれをとっても本物のギネスのようだ。
原題:Why Nonalcoholic Beer Should Be a Year-Round Order: Top Shelf(抜粋)
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