(ブルームバーグ):フランスの病院でがん治療のため造血幹細胞移植を受けたアン・マルジンスキさんは激しい免疫反応で腸が大きなダメージを受けた。命を救えるかどうかは意外なものに由来する治療法にかかっていた。人の便だ。
移植片対宿主病(GVHD)は骨髄移植患者によく見られる合併症だが、マルジンスキさんに免疫抑制剤を投与しても症状は収まらなかった。そこで、フランスのバイオテクノロジー企業MaaTファーマが開発した治験薬が、早期アクセスプログラムを通じて投与された。効果は劇的だった。
「ひどい下痢が何週間も続いていたが、翌日にはかなり良くなった」と、マルジンスキさんは2021年11月にニースの病院の集中治療室で受けた治療を振り返った。
2週間後には退院し、今のところGVHDの症状は出ておらず、がんの一種である骨髄線維症が再発している兆候もない。
この画期的な治療法は、体内や体表に存在するさまざまな細菌、ウイルス、真菌、寄生菌の集合体「マイクロバイオーム」の力を利用して病気の治療・予防を目指す新しい分野だ。初期の研究は、腸内細菌が免疫システムを活性化させて治癒力や回復力を促進することで、がんから認知症までさまざまな疾患に重要な役割を果たす可能性を示唆している。
マルジンスキさんの回復は一例にすぎない。投与された治験薬「MaaT013」は、標準的な治療を行っても症状が改善しない他の患者にも有効なことが、8日発表された臨床試験結果で示された。がん治療の新たな柱になる可能性も出てきた。
MaaT013は、健康なドナーの便から抽出した有効な腸内細菌を含み、腸管内の有益な細菌を回復させることで作用する。これら細菌は免疫システムの活性化だけでなく、食物の消化やホルモン合成など生存に不可欠な機能も果たす。
臨床試験結果は25年半ばに予定されている規制当局への申請を後押しする見通し。MaaTが承認されれば、がん治療で初となる微生物相の治療法になる。これまでに米食品医薬品局(FDA)が承認したマイクロバイオームの治療法は二つだけで、いずれもディフィシル菌による重度の下痢が対象。
原題:Drug Made From Fecal Matter Helps Transplant Patients in Study(抜粋)
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