テクノロジー分野を中心に、未公開企業は何十億ドルもの資金を調達し、株式公開への道を遅らせたり、時には上場を避けたりすることさえある。こうした動きは従業員や初期段階の利害関係者に多大な富をもたらす一方、一部の米企業が提供する確定拠出年金401(k)などでは投資できない人々を締め出す形となっている。

新規株式公開(IPO)が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)時の熱狂から後退したことで、その傾向は一段と鮮明になっている。このため、比較的少数の人々が上値余地にアクセスできる一方、投資家候補の大半は傍観することしかできなくなっている。

上場企業の数は減少したのか

答えはイエスだ。ここ20年で世界の上場企業の数は減少している。証券価格調査センター(CRSP)によると、米国だけでも上場企業は1997年の約7500社から現在では4000社弱と、ほぼ半減している。

なぜ未上場のままなのか

プロの投資家、特に機関投資家はますます未公開企業に目を向けるようになっている。未上場企業はリスクが高い一方で、利用可能な資本のうちこれまでになく大きな割合を占めるようになっている。未公開市場に注目と投資が集まり、オープンAIやスペースXなどに対する株式取得希望者の需要は旺盛だ。切られる小切手はどんどん大きくなっている。

実業家イーロン・マスク氏率いるスペースXの企業価値評価額は3500億ドル(約54兆8000億円)に達し、規模としてはS&P500種の上位25社に入る。サム・アルトマン氏のオープンAIは新たに66億ドルを調達し、評価額が1570億ドルに上っている。フィンテック大手のストライプは約700億ドルの価値評価で自社株を買い戻した。また、ソフトウエアを手掛けるデータブリックスは100億ドルを調達し、評価額を620億ドルに引き上げたばかりだ。

初期段階の投資家や従業員が満足している限り、こうした未公開企業はより緩やかな規制環境による恩恵を受けることができ、変化を求めるアクティビスト(物言う株主)に対処したり、企業秘密や非公開にしておきたい他の事項を開示したりする必要もない。

未公開企業にはどれだけの資金が投じられているのか

ベイン・アンド・カンパニーのリポートによると、10月時点でプライベートエクイティー(PE、未公開株)所有の企業だけで約3兆ドルに上る。資金を調達して企業を非公開化したり、非公開を継続させたりしているPEファームには、上場させるか売却する必要がある企業が山積している。

データにもよるが、従来のベンチャーキャピタル分野でも数字は似たようなものだろう。ピッチブックのデータによると、ベンチャー支援のユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場企業)は1400社余りある。

未公開企業はどのように評価されるのか

上場企業と同じで、投資家がその会社の株式に対して支払ってもいいと考える金額に基づいて評価される。違いは、上場企業の株価が取引時間中に証券取引所でリアルタイムに更新・表示されるのに対し、未公開企業の株式取得価格は厳重に守られた秘密であることが多く、まれに資金調達ラウンド後に評価額がプレスリリースで開示されることがある。

未公開企業にはどのような監督があるのか

未公開企業であることの重要な点の一つは、厳密には事業に関する細かい情報を一般に公開する必要がないということだ。しかし、規模が大きい企業の多くは義務でなくても事業運営に関する詳細を共有している。

未公開企業に投資することは可能か

個人投資家が未公開株を購入することは、特定のライセンスなどを持っている自衛力認定投資家でない限り難しい。こうした規則は個人投資家を保護するために存在する。自衛力認定投資家になれば、フォージ・グローバル・ホールディングスやレインメーカー・セキュリティーズが提供するようなプラットフォームを使って未公開企業の株式を買うことができる。しかし、これらの市場は不透明で、独自の要件があり、高額になることもある。

自衛力認定投資家でもなく、未公開株購入で運用者にお金を支払いたくもない人たちにとって、最も有力な方法はクローズドエンド型ファンド「デスティニー・テック100(DXYZ)」を利用することだろう。DXYZはスペースXやオープンAIといったユニコーン銘柄を保有している。しかし、注意が必要で、ファンドが直近に報告した純資産価値は1口5.32ドルだが、60ドル以上で取引されている。つまり、現在の価格で購入する人はファンド自身が説明する資産価値に対して大幅なプレミアムを支払うことになる。

株式公開による企業側のメリットは

401(k)型など幅広い投資家から資金を調達する機会がある。全ての企業が未公開市場で必要な資金を調達できるわけではないため、IPOが目標となることが多い。企業は通常、事業資金を調達したり、債務の一部を返済したりするため公募を実施する。

また、株式上場によって、従業員や長期投資家はより簡単かつ頻繁に株式の評価額を把握することができるようになる。

多くの企業にとって、株式公開は潜在的な従業員や顧客、サプライヤーに対する信頼度を高める。また、上場はブランディングの場としても機能し、当該企業の業務や見通し、財務状況が定期的に一般に開示されるため信頼感の向上に役立つことも多い。

原題:Why Companies Like OpenAI Are Staying Private Longer: QuickTake(抜粋)

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