日本の「対中交渉カード」と「ジャパン・ファースト」外交の是非

一方、対中関税を一律60%に引き上げると公約している米トランプ次期大統領の来年の就任を見越してか、中国政府は日本や欧州との関係改善を図り、外交的な立場を調整しています。

例えば、中国政府は11月に日本人に対する短期滞在時のビザ免除措置を同月30日から再開すると発表。コロナ禍を機に停止されていた免除措置に対しては、日本の経済界などからは再開を求める声が上がっていました。

また、日本企業が中国市場で発言力を高めるチャンスも生まれています。「日本企業の現地法人の人が地方政府の要人と会うとき、昔であれば会ってくれなかった“偉い人”が出てきて話を聞いてくれるなどの動きも出てきていると聞いています」

とはいえ中国は日本を「必ずしも“非常に重要”な部類には入れてない可能性がある」と三浦さん。

そんな中でが関係改善を図る中国に対して日本はどう相対するべきでしょうか?交渉カードとして使えるのは「中国が日本の技術などに依存している部分がある半導体の製造装置や部品」で、そういったものを生かす戦略を描くべきとのこと。

トランプ次期政権の対中輸出規制の強化が日本企業にとってマイナスの影響を及ぼす懸念もあります。「トランプ政権が“アメリカ・ファースト”だからといって日本は“ジャパン・ファースト”だとなるとそれぞれが孤立主義ということになってしまう。他の国と連携をする中で中国も含めてアプローチをしていくのが望ましいのでは」

米中対立の先行きは非常に不透明で「落としどころがまだよく分からない」と三浦さん。

「関税引き上げの先にトランプ次期大統領が何を求めてるのかはっきりしない。ただ一般的な電気電子製品、あるいは衣服などの軽工業製品はアメリカに輸出されているので、そこから中国経済に打撃は広がるでしょう。対中追加関税の下押しの影響も来年無視できないものになる可能性があります」

中国の経済対策や米中対立の動向は日本を含む世界の経済にとっても大きな影響を与えるため、今後も注視が必要でしょう。

(※情報提供:ニッセイ基礎研究所 主任研究員 三浦祐介)

(TBS CROSS DIG with Bloomberg 「WORLD DECODER」12月13日配信より)