米国では企業経営幹部や資産家が個人的な警備体制を強化している。こうした傾向は、米医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの幹部ブライアン・トンプソン氏が今月、ニューヨーク市マンハッタンにあるホテルの外で撃たれて死亡する事件の前からあった。

超富裕層の住宅に特注の防弾設備やシェルターを設置するフォーティファイド・エステートにとって米大統領選を控えた10月は、月間として記録的な忙しさだったと、創業者ジョン・ハリス氏は話し、「人々はこれから何が起こるのか確信が持てなかった」と分析した。

2018年に同社を設立したハリス氏は、新型コロナウイルス流行や、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害されたことを巡る抗議運動、21年の米連邦議会議事堂襲撃事件など不穏な出来事のさなかやその後にビジネスが活況を呈することを目の当たりにしてきた。

もっとも超富裕層が高度な警備を導入するのは目新しい話ではない。だが、業界幹部4人への取材によると、ここ数年、米富裕層はかつてないほど身の安全に関心を強めている。

ニューヨーク州ハンプトンズにある広大な邸宅には赤外線を備えたロボットカメラが設置され、地中海でヨットに乗っていても自宅で起きているあらゆることを確認できる。ロサンゼルスやサンフランシスコにある豪邸の住人は、強化シェルターや防弾ガラス窓を新たに導入。ゲートのないコミュニティーに住む富裕層は、私設警察を雇うため資金を出し合っている。

トンプソン氏殺害事件を受け、そうした不安感はさらに強まった。ネット上ではこの事件を受け流す反応が大半を占め、称賛するコメントさえあった。

ハリス氏や超富裕層と法人顧客に重点を置く英セキュリティー・サービス・インターナショナルのラッセル・グレイ氏によれば、両社の米国顧客基盤はいずれもニューヨーク州とカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州に集中している。特に「低所得者向け住宅の近くに高級住宅が立ち並ぶような、格差の大きい地域」で個人からの関心が高まっているとハリス氏は話した。

原題:Ultra-Wealthy Were Bulletproofing Homes Even Before CEO Murder(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.