トランプ次期米大統領の政策と米金融当局の利下げで2025年後半にドルに下押し圧力がかかる可能性が高いとみて、ウォール街ではドルの見通しが弱まり始めている。

モルガン・スタンレーやJPモルガン・チェースなどセルサイドのストラテジスト約6人は、世界の準備通貨ドルが早ければ来年半ばにピークに達し、その後下落に転じると予測。ソシエテ・ジェネラルは、ICEドル指数が来年末までに6%下落するとみる。

ドルは今年既に大幅上昇しており、15年以来最大の上げとなるペース。米大統領選挙でのトランプ氏勝利と、好調な経済データを受け、トレーダーらが来年の米利下げ回数予測を下方修正したことが要因だ。

ソシエテ・ジェネラルの為替戦略部門トップ、キット・ジャックス氏は、ドルの強さには「胃が痛くなる思いだ」と述べ、「長期的に持続不可能な水準まで相場が押し上げられている」と指摘した。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は今年これまでに約6.3%上昇。大半は11月初めの選挙日直前からとそれ以降の上げだ。トランプ氏の関税と減税がインフレをあおり、米金融当局の利下げ方針を向こう数カ月にわたり複雑化させるとの見方がドル高を後押ししており、世界の投資家が米国に資金を移すインセンティブとなっている。

一方で、マシュー・ホーンバック氏らモルガン・スタンレーのマクロ為替戦略担当者は、こうした脅威がドル高につながると見込むものの、最終的にはドルは来年の今頃までに現水準を割り込むと予想。米国の実質金利低下とリスク選好改善が重なり、ドルの先行きに最も弱気なシナリオが生じると付け加えた。

トランプ氏は貿易に関してタカ派的発言を強めており、最近では、移民や麻薬関連の国境問題を理由にメキシコとカナダの物品に25%の関税を課すと表明。メキシコ・ペソとカナダ・ドルが下落した。トランプ氏は今月、新興国グループが基軸通貨としてのドルの地位に挑戦を試みているとして、同グループを批判した。

最近のドル高傾向は、ドル以外の通貨の軟化につながっている。米大統領選の後、ユーロは11月に対ドルで2年ぶりの安値を付け、ほぼパリティー(等価)となった。MSCIの新興国通貨指数は現在、4カ月ぶりの安値圏にあり、中国が来年、人民元の1ドル=7.50元への下落を容認する可能性があるとも報じられている。そうなれば元は07年以来の安値水準となる。

ただ、ドル強気派の多くはトランプ氏の貿易に関する見解が本質的にドルを支えるとの見方からロングポジションを積み上げてきただけに、トランプ政権2期目に貿易戦争の可能性が解消すれば強気派の失望を招くと、ダニエル・トボン氏率いるシティグループのストラテジストらは予想する。

米商品先物取引委員会(CFTC)の12月10日終了週の統計を基にブルームバーグが集計したデータによると、投機筋は依然として240億ドル(約3兆6900億円)規模のドルのロングポジションを維持しており、これは5月以来の高水準付近だ。投機筋は選挙を控えた10月半ばから強気姿勢を維持している。

トランプ次期政権下のドル相場の動向を考える場合、過去の値動きが参考になる。8年前のトランプ氏初当選直後に急上昇した後、17年には、米経済の勢いが失われる一方で欧州の成長が加速したため、ブルームバーグ・ドル指数は年間で過去最大の下落を記録した。

今回は劇的なドル安にはならないとウォール街では予想されているが、ドルは25年前半にピークを迎える可能性があると、デレク・ハルペニー氏ら三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のアナリストは予想している。

原題:Dollar’s Trump-Fueled Gains Face a Reality Check Late Next Year(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.