(ブルームバーグ):米ボーイングは復活の年となるはずだった2024年に、08年以降で最大の株価下落に見舞われている。また、ウォール街の予測が正しければ、来年の株価は小幅回復にとどまる見込みだ。
同社株は年初来で35%値下がりし、S&P500種株価指数の下落率上位20銘柄に入っている。株価はここ1カ月に安定しているものの、投資家の警戒感は根強い。24年の相次ぐ危機を受け、ボーイングの見通しへの信頼が揺らいでるほか、トランプ次期政権の下で貿易摩擦が再燃したら、同社が打撃を受ける恐れがあるとためだという。
ラショナル・ダイナミック・ブランズ・ファンドのポートフォリオマネジャー、エリック・クラーク氏は「現時点ではニュースにならないだけでも、ボーイングにとっては勝利だ」と指摘する。
ボーイングは今年初めには、18年と19年に起きた墜落事故や、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による世界的な旅行急減の影響から回復しつつあるように見えた。中国との緊張関係の緩和に向け大きな一歩を踏み出したほか、航空機の受注は増加し、株価は約2年ぶり高値を記録していた。ウォール街は圧倒的に楽観的で、同社株の「売り」の投資判断はゼロだった。
しかし、1月にアラスカ航空が運航するボーイング機のフライト中にドアプラグが吹き飛ぶ事故が起きると、状況は一変し始めた。世論の反発が高まり、ボーイングの企業慣行や文化に対し厳しい視線が向けられた。経営陣の刷新で最高経営責任者(CEO)が辞任したほか、内部告発や労働者のストライキにも見舞われた。同社は多額の現金燃焼が25年も続くと予想している。

こうした一連の出来事は、ウォール街の利益予想に打撃を与えた。ブルームバーグ集計のデータによると、1年前の時点では、ボーイングの24年の1株損益のアナリスト予想平均は4.18ドルの黒字だった。しかし、現在では15.89ドルの赤字と、20年以降で最悪になると見込まれている。
アナリストの間で同社株の最近の回復が持続するとの期待が低い理由がこれで説明できる。アナリストの12カ月の平均目標株価は、13日の終値169.65ドルから約7%上昇する可能性を示唆している。
ボーイングはコメントを控えた。
25年に入る中での大きな懸念は、トランプ氏が追加関税計画を実行に移した場合、サプライチェーンが世界中に広がる同社はリスクにさらされるということだ。
しかし、ボーイングにとって最大の懸念は生産減速だ。アラスカ航空の事故後の品質改善の取り組みや、11月に終結したストという2つの要因が重なったことで、キャッシュフローが圧迫され、ライバルのエアバスにほぼ後れを取っている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、エアバスは昨年、世界の民間航空機受注残の約60%を占めた。

原題:Boeing’s Year of Crisis Leaves Investors Wary of Beaten-Up Stock(抜粋)
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