来年の景気は、賃上げ率の引き上げが大きな焦点だ。「法人企業統計」を使った労働生産性の分析では、2024年は生産性上昇→賃金上昇というパスが働いていることがわかる。2025年も2%台の物価上昇の下で、労働生産性の上昇を通じて一定の賃上げ率が期待できるとみている。
賃金上昇トレンド
来年の景気を占う上で鍵を握っているのが、賃上げである。賃上げ率が高まれば、それによって個人消費も増える。物価上昇によって、生活苦を感じている家計の多くは、賃上げでいくらか報われるだろう。2025年は、トランプ次期大統領によって、政治・外交・経済が大きく翻弄される年になりそうだ。だからこそ、賃上げで内需の根幹をしっかりしていかなければいけない。その意味で、年初から本格化する春闘交渉の行方は重要になる。本稿では様々な角度で2025年の賃上げの動きを予想してみたい。
まず、現状の賃上げ圧力は高い。企業向けサービス価格指数(日本銀行)の中に、「高人件費率サービス」というカテゴリーがある。その伸び率は、2024年10月に前年比3.3%(9月2.9%)と趨勢的に高まっている。ここにはサービス価格の中で、人件費が増えて、そのコストプッシュ圧力が高まっている姿が映し出されている。
また、中小企業庁の「価格転嫁のフォローアップ調査」(2,000社対象)では、半年ごとに状況変化を調べている。2024年9月は、全体の価格転嫁率が49.7%まで上がった。この比率は、2023年9月45.7%、2024年3月46.1%から9月は少し上がった。コスト要素別の転嫁率は、労務費の分野で2023年9月36.7%、2024年3月40.0%から、2024年9月44.7%へと上がっている。この労務費の価格転嫁率の変化は、人件費の比率が高いサービス業や中小企業でも値上げが進んでいることを反映したものだろう。2025年の春闘で、中小企業への波及が期待できる材料になる。
すでに、労働需給の影響が受けやすい非正規労働者の賃金指標は、上昇方向に動いている。リクルートのジョブズリサーチセンターの平均時給調査(三大都市圏)では、アルバイト・パート募集時平均時給が2024年11月1,178円(前年比2.5%)と伸びている。フード系の伸びが4.2%と高い。
