(ブルームバーグ):10日の日本市場では株式が続伸。為替が対ドルで一時151円台半ばまで円安が進んだほか、中国共産党が金融緩和と財政支出を拡大する方針を示したことは世界景気にプラスに働くとみられた。
NFJインベストメント・グループのファンドマネジャー、バーンズ・マッキニー氏は中国が金融緩和で狙っているのは消費者向けの対策で、問題の核心への対応ができれば、「中国で急成長している中流階級を本当に活用できる」と述べた。
中国共産党指導部は9日、2025年に金融緩和と財政支出の拡大を進める方針を発表。トランプ次期米政権の発足を来月に控え、米国との第2次貿易戦争に備える。
債券は米長期金利の上昇などを材料に下落した。円相場は1ドル=151円台前半で推移。日本銀行の年内の利上げ観測が薄れ、日米の金利差はなかなか縮まらないとの見方から一時約1週間半ぶりの円安水準を付けた。
市場関係者の金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)を見ると、日銀の12月利上げの織り込みが2割台に低下する一方、米国の12月の利下げの織り込みは8割台に達した。
株式
東京株式相場は続伸。外国為替市場で一時1ドル=151円台半ばまで円安が進んだほか、中国共産党が金融緩和と財政支出を拡大する方針を示し、業績や世界景気の先行きを楽観視する買いが輸出関連や商社、鉄鋼株などに優勢となった。
フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、市場参加者は中国の経済見通しにかなり悲観的だったため、昨日の中国共産党の発表は多くのポジティブな感情を生み出し、市場を押し上げたとの見方を示した。
東証33業種は16業種が上昇、下落は17業種。上昇率上位は卸売業、鉄鋼、電機、輸送用機器、海運など。下落は保険や電気・ガス、その他製品、非鉄金属など。売買代金上位ではディスコや東京エレクトロン、ソニーグループ、三井物産、資生堂が高い。半面、三菱重工業やフジクラ、任天堂、第一三共は下げた。
債券
債券相場は下落。米長期金利の上昇や円安が売り材料となった。半面、この日実施された5年債入札が強い結果となり、先物中心に買い戻しが入る場面も見られた。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、5年債入札について「午前に利回りが大きく上昇して強い結果になった」と分析。日銀の利上げに対する見方が錯綜(さくそう)しており、利上げ観測の後退から一部で買いを入れたとの見方を示した。
大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、5年入札は前回も今回も0.7%台で順調にこなし、「先々の利上げを想定しても一定の需要がある水準であることが確認された」と言う。先物は入札結果を受けて買いが入った後、戻り売りも出ており、「限月交代の影響もあり、値動きが荒くなっている」とみていた。
入札結果によると、最低落札価格は99円83銭と市場予想の99円81銭を上回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は1銭と前回の2銭から縮小した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は4.42倍と、昨年7月以来の高水準。
新発国債利回り(午後3時時点)
外国為替
東京外国為替市場の円相場は対ドルで151円台前半で推移。日銀の12月の利上げ織り込みが低下していることを受けて売られた後は買い戻された。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、午後に入り海外市場から続いた「ドル高にブレーキがかかっている」と指摘。円売りの勢いが一時強まったことについては、為替市場は12月の利上げはなさそうだとの見方に傾きつつあり、利上げを期待して円を買った向きが売り戻しを迫られたとの見方を示した。
ドイツ証券の小川和宏外国為替営業部ディレクターは、日銀の利上げが12月か来年1月かで大きな違いはないが、海外勢が利上げ織り込みの変化に反応して動いていると言う。トランプ次期米大統領の下で財政拡張や関税政策によりインフレ加速のリスクがあり、目先は「ドル高の材料しかない」と話した。
--取材協力:Chiranjivi Chakraborty、田村康剛、船曳三郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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