(ブルームバーグ):野村ホールディングス(HD)傘下の野村証券が、国債の相場操縦に関与したとして、日本国債トレーダーの澤田拓士氏を9月に解雇していたことが分かった。
自主規制団体である米金融取引業規制機構(FINRA)が公表した資料によると、国債先物取引の相場操縦に澤田氏が関わっていたと日本の証券取引等監視委員会が判断したことを受け、野村証は9月30日付で同氏を解雇した。
監視委は同月25日、野村証のトレーダーが2021年3月9日に大阪取引所上場の長期国債先物取引で、「見せ玉」と呼ばれる手口で不正に価格を操作したとして同証に課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告。野村証は不正を認め、同庁は10月末に2176万円の課徴金納付命令を出した。
FINRAの資料によると、澤田氏は02年に野村証に入社。ブルームバーグは10月、円金利トレーダーとして10年以上の勤務歴のある同氏がトレーダー業務から外れたと複数の関係者の話を基に報じていた。担当を外れた理由や同証での雇用状況については明らかになっていなかった。
相場操縦への澤田氏の関与や解雇などについてコメントを求めたところ、野村HDの広報担当者は「全てのトレーディング担当者は、見せ玉は容認されないことを当社およびFINRAの研修で繰り返し履修しており、さまざまなコンプライアンス(法令順守)に関する誓約書等に署名している。また、すべての社員は不正に関するいかなる懸念についても上司に報告する義務を負っている」と電子メールで返答した。
監視委の担当者はFINRAの資料に対するコメントを控えた。澤田氏からのコメントは得られていない。
野村証は発行残高が約1100兆円に上る国債市場での主要プレーヤー。排他的ともされる同市場で大きな影響力を持つ。同証が相場操縦を認めたことで、財務省は同証の国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)の特別資格を10月15日から1カ月間停止した。
同問題を受けて生命保険会社や資産運用会社、信託銀行など複数の国内大手機関投資家が、同証との間で債券や株式などの取引を原則停止する事態も招いた。同証は国債先物の個々の発注・取り消しについてのモニタリングを始めるなど再発防止策を発表。少なくとも一部の機関投資家は取引を再開したことが分かっている。
--取材協力:Michael J Moore、中道敬.
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